錦織は鬼門のクレーシーズンを乗り越えられるか?
また、今季は、選手が通常フィジカルトレーニングや負荷やコートでの練習量を落とす大会期間中も、逆にそれらを上げる勢いで肉体を追い込んできた。それが原因で試合中に疲労が見られることもあったが、そういう状態でも2月にはメンフィス大会優勝、アカプルコ大会準優勝という安定した成績を残し、それでいてケガもしていないところにスタミナの向上を見ることができる。その時期を乗り切ったという手応えもあるだろう。 昨年、全仏オープンを1回戦ストレート負けというかたちで終えてしまった錦織は、ぶっつけ本番がどれだけ困難か知りつつも欠場しなかった理由について、「グランドスラムだからです。今年はクレーで自信をつけることができたので、フレンチに期待していました」と、複雑な思いを語った。昨年の自信と無念、それが今年のクレーシーズンにかける錦織の力の源だ。 バルセロナの連覇も、マドリードでのマスターズシリーズ初優勝も大きなテーマだが、最大目標はロランギャロス。今年こそは過去の悔しさを晴らすクレーシーズンになりそうな気がするのは、バルセロナで見せている静かな闘志と貫禄の試合運びのせいだろうか。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)