アサヒビール、”生ジョッキ缶”を応用したレモンサワーで飲酒体験の新たな価値を醸成「差別化より”独自化”を狙う」
アサヒビールが世界初となる”本物のレモンスライス”の入った『未来のレモンサワー』を6月11日に発売する。『スーパードライ 生ジョッキ缶』の技術を応用し、フタを開栓するとレモンスライスが缶の底から浮き上がってくる仕様で、発表されて以来、SNS等でも話題となっている。ストロング系チューハイの発売が縮小されているなか、この『未来のレモンサワー』はチューハイ、サワー市場において、どのようなポジションを担うものとなるのか? 商品の開発意図や開発エピソードなども合わせて、担当者に聞いた。 【写真】『未来のレモンサワー』に入るスライスレモン、どう作られる? 製造工程
■レモンが浮き上がるワクワク感など、味覚以外の感覚を刺激するサワー
『未来のレモンサワー』は今年、同社の年初会見の目玉として発表された。SNSではすぐさま新商品として拡散され、「缶レモンサワーの中にレモンスライスを入れる」という発想に期待感が高まったのは記憶に新しい。“果肉”ではなく、“果物本体”を入れるという斬新なアイデアだが、その着想は21年に発売された『スーパードライ 生ジョッキ缶』の開発段階から始まっていたという。 「2021年に『スーパードライ 生ジョッキ缶』を発売しましたが、これをチューハイ、サワーにも転用できないか? ということから着想しました。『生ジョッキ缶』は”居酒屋の生ビールを家庭で楽しむ”という趣向で作りましたが、それと同じ文脈で、居酒屋で飲むような美味しいサワー、チューハイを作ってみようと。居酒屋のレモンサワーにはカットレモンが1個入っていますが、そういう部分も含めて“シズル感”を感じていただけるよう開発を始めました」(アサヒビール株式会社 マーケティング本部 新ブランド開発部 担当課長・山田秀樹さん/以下同) 同商品はただレモンが入っているだけではなく、”フタを開けるとレモンスライスが浮き上がってくる”ことが最大の特徴である。 「最初レモンは缶の底に沈んでいますが、フタを開けると炭酸の発泡によってフワッと浮上してきます。当初は居酒屋のレモンサワーに多い『くし形切り』で試していましたが、それだと浮力が伴いにくく、底に沈んだり液中に漂うような状態になってしまう。そこでスライスという形状を選択しました」 この”レモンが浮き上がってくる”というアクションは、RTD(Ready to Drink/缶を開けてすぐに飲めるお酒)商品としては到底考えられなかった発想だ。それだけにユーザーは驚きや感動、ワクワク感を強く感じるわけだが、それこそが開発の狙いだったという。 「やはり”レモンが浮き上がる”というアクションがある方が楽しいし、非常にワクワクします。ただ『味が美味しい、香りが良い』というだけではなく、『楽しい』とか『テンションが上がる』といった感情の琴線に触れられると思いました。またフルオープン缶を開けるとパカッと良い音がして、『さあ、飲むぞ』という心の高鳴りを感じることができます。そもそもお酒を飲むシーンというのは、ただ酔うだけではなく、楽しい場であるべきで、その楽しさをより助長する要素として、見た目や音なども加えています。味覚以外のいろいろな感覚を刺激することで、これまでよりももっとお酒を楽しんでいただきたいと思っています」