NISAはタイムカプセルだ! 株価下落で解約増だが、やめてはもったいない(黒岩泰)
【シニアのためのマネー講座】#94 「山で遭難したら登るのが原則」 助かる確率が高まるからだ。専門家はそう説明する。確かにこのまま下っても、安全に下山できるとは限らない。崖や滝にぶつかり、八方ふさがりとなるケースもあるからだ。 新NISAの投資信託「基本のキ」…お金に働いてもらい、毎月1万円積立で年利3%→20年後には330万円に ただ、実際に遭難したことのある人間(私)からすると、これは「机上の空論」にすぎない。携帯の電波も届かず、体力に限界がある状況下では、「登る」という選択肢はあり得ない。ただでさえ急斜面を下りてきたのに、「それを戻る」というのは体力的に無理なのだ。 「生きるために下りるしかない」 そう考えるのはごくごく自然なのである。 そんななか、新社会人に「五月病」が蔓延しているという。最近では「退職代行サービス」なるものが登場し、会社に言いにくいこともすべて“代行”してくれる。昭和世代には「どこまで過保護なんだ!」と思われる事案でもある。 そんななか、最近の株価下落で、せっかく始めたNISAを解約する人が増えているという。 「思った値動きと違った」 「損失が小さいうちにヤメよう」 そう考えてしまったからだ。 だが、NISAというのは、そもそも株価下落を想定した投資手法。ドル・コスト平均を使って買い付け単価を低く抑える、というのが特徴だ。「株価が下落したから解約する」というワケの分からん想定にはなっていない。 要するに、投資でも何でも意志を貫くことが重要。シニアにとっては短い期間であっても、始めたからには、それを続けることが重要だ。 途中で投げ出すくらいなら、最初からヤラない方がいい。新社会人よ。会社に入ったからには、精根尽きるまで働いてみてはどうか。 「遭難したら下りたらダメ!」と言われても、乗りかかった船、とことん下ってやろうではないか──。 ■10年後、20年後にフタを開けるもの NISAに関しても、やり始めたからには続ける、というのが重要だ。だから途中の株価なんて見る必要はない。見たってどうせ分からない。10年後、20年後にフタを開けてどうなの? という世界である。 これは小学生のタイムカプセルと同じ。「あれっ、おかしいな? この木の下に埋めたハズなのに……」と、担任がグチるのも、いつものお約束。でも、そんなときは、「遭難しちゃいましたね」と、颯爽と笑い飛ばせばいい。 (黒岩泰/株式アナリスト)