世界の名建築を訪ねて。フランス建築界の巨匠ジャン・ヌーヴェルの“V字形に傾斜したユニーク極まりない” 39階建て高層ビル「トゥール・デュオ(Tours Duos)」/フランス・パリ
世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載17回目。今回は、フランス・パリにある39階建て高層ビル「トゥール・デュオ(Tours Duos)」(設計:ジャン・ヌーヴェル)を紹介する。
V字形に傾斜した大胆な造形美
フランス建築界の巨匠ジャン・ヌーヴェルといえば、飛ぶ鳥を落とす勢いの世界的な建築家である。2002年東京に彼初の超高層「電通タワー」を完成させ、その後ニューヨークに超高層のハイグレードな「53West53」を完成させ、さらに中国に「深セン・オペラハウス」、「上海浦東美術館」と話題の作品をデザインし続けてきた。そのパワフルなヌーヴェルが、今度は地元パリに「トゥール・デュオ」というV字形に傾斜したユニーク極まりない建築を完成させ、パリジャンの度肝を抜いた。 今パリの東部地区は新規開発が進行し、パリの未来に向けて強烈な牽引力を発揮しつつある。というのは今年(2024年)の7月からの夏季オリンピックのため、パリは高層ビル建設のラッシュが続いている。こうした状況の中、ジャン・ヌーヴェル設計の「トゥール・デュオ」は、ドミニク・ペローがデザインした「フランス国立図書館」からセーヌ川沿いに少し下った位置で、パリ左岸の13区にあるブリュヌゾー通り沿いに立ち上がった。
エッフェル塔、モンパルナス・タワーに次ぐ、パリで3番目に高いビル
2棟からなる「トゥール・デュオ」は、延床面積140,000m2の巨体で、39階建て、高さ180mの「デュオ-1」にはオフィス、オーディトリアム、レストラン、ショップが組み込まれている。29階建て、高さ125mの「デュオ-2」にはオフィス、レストラン、ショップ、ホテル(139室)、パノラミック・レストラン、バーなどがある。また「デュオ-1」にはオープン・テラスがあり、パリのワイドな景観を満喫できるようだ。建物は324mのエッフェル塔、210mのモンパルナス・タワーについで、パリで3番目に高いビルとなった。
建物は2棟がV字形に対峙した感じで立ち上がっているが、手前に立っていて頂部に頭がある建物が「デュオ-1」で、奥側に傾いて見えるのが「デュオ-2」である。「デュオ-2」には、著名インテリア・デザイナー&建築家のフィリップ・スタルクがデザインしたホテルがある。敷地がセーヌ川沿いの工業地帯とはいえ、おそらくゴージャスなフィニッシュが施されていることは想像に難くない。 「トゥール・デュオ」の特徴のひとつは、サミット(頂上部分)に”頭”があることだ。高層ビルに”頭”がデザインされていることは、歴史的に見ても非常に少ない。これらふたつの”頭”で建物は識別可能となっているし、これらふたつのサミットがお互いにトークし合ったりしているように見えるのだ。
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