「富士山登山鉄道」断念、でも代わりは“トラム”なの!? 後継には「電動連節バス」しかない3つの理由
富士トラムの課題と限界
富士スバルラインに代わる交通手段・富士トラムは、比較的低コストで導入できることから注目されている。磁気マーカーや白線に沿って走行する車両を使用し、LRTのような高額な鉄道設備を必要としないため、コスト面で大きな利点がある。 しかし、この選択肢にも限界がある。 「輸送能力」 はLRTに比べて低くなるのは避けられない。また、動力源として水素の活用が想定されているが、燃料電池方式はコストが高く、輸送力の面でも 「混雑時に影響を受けやすい」 というデメリットがある。編成を増やすという意見もあるが、専用車両が必要となり、製作費が高くなることは避けられない。LRTと水素トラムのデメリットを考慮すると、冒頭で書いたように、最も合理的な解決策は 「電動連節バス」 の導入だろう。これには ・初期投資とランニングコストの低さ ・環境への配慮 ・柔軟性と高い運行効率 というメリットがあり、さらに日本から新技術を発信するよい機会になると考えている。
三つのメリット
前述の ・初期投資とランニングコストの低さ ・環境への配慮 ・柔軟性と高い運行効率 について、ひとつつ説明していこう。 ●初期投資とランニングコストの低さ 電動連節バスは、架線や線路といった大規模なインフラ投資が必要ない。そのため、初期投資やインフラ整備のコストを大幅に削減できるのが大きな魅力だ。既存の道路をそのまま使える点も優れている。例えば、日野自動車が製造する国産ハイブリッド連節バスは1台8800万円(税抜き、113人乗り)で、完全電動化に向けてあと一歩の段階にある。電動車とエンジン車の価格比を 「1.5:1」 と見積もれば、電動連節バスを約1.3億円で開発すれば勝算がある。さらに、電動化すれば自動運転との相性もよくなり、将来的には無人運転の実現も期待できる。 ●環境への配慮 電動連節バスはCO2を排出しない、環境に優しい移動手段だ。架線や線路の設置によるCO2排出も避けられるため、LRTのような鉄道システムより環境負荷が格段に低い。また、電動バスは排ガスや騒音が発生しないため、 「建物のなかにも直接乗り入れる」 ことが可能だ。この特長を生かせば、鉄道駅構内までアクセスできるような仕組みを整えられ、乗り換えの手間を減らす効果も期待できる。 ●柔軟性と高い運行効率 電動連節バスは路線変更や交通量の変化に柔軟に対応できる。観光シーズンや混雑時でも効率的に運行でき、富士登山鉄道の駅から富士五湖方面の観光地へアクセスする便にも活用できる。 また、富士スバルライン以外の路線でも、環境に配慮した乗り物としてアピールできる。さらに、ゴムタイヤで走行するため道路上の障がい物に強く、運行の柔軟性が非常に高い点も大きな利点だ。