「もっと働け」と強いる“女性活躍推進”のむなしさ 男女の格差なぜなくならない?
「同じ仕事で賃金差があるのは問題」「なかなか差が埋まらない」―――。 海外と比較しても大きいと言われる日本の男女間の賃金格差。その是正に取り組むべく、政府は「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」を立ち上げました。 【グラフ画像を見る】男女間賃金格差の推移 岸田首相はプロジェクトチーム発足の会合で、女性活躍・男女共同参画は日本の経済社会の持続的発展に不可欠な要素だと述べています。確かに、女性の活躍や男女共同参画、賃金格差の是正は大切なことです。 ただ、必ずしも働くことだけが活躍とは限りません。家事や育児を含めて活躍し、頑張っている女性は既に世の中にたくさんいます。それなのに活躍、活躍と言われ続けることで、いまの女性が活躍していないかのように思われていると受け取る人も少なくありません。 活躍を求められることで「もっと働け!」と追い立てられているような負担を感じる女性もいる中、男女の賃金格差是正は、女性活躍をさらに推進することで解決できる問題なのでしょうか。
男女間の賃金格差なぜ? 4つの要因
「第1回女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」に出された厚生労働省の資料によると、男女の賃金格差は以下の通りです。 徐々に格差が縮まってきているとはいえ、一般労働者における男性の給与を100とした場合に、女性の給与は74.8にとどまります。一般労働者とは、パートなどの短時間労働者以外を指します。このような差が生まれる要因はさまざまですが、中でもポイントを4点挙げたいと思います。 1つは、正社員比率の差です。先ほど紹介した厚労省の資料の基になっている賃金構造基本統計調査を確認すると、正社員の所定内給与額は33万6300円であるのに対し、非正社員は10万円以上低い22万6600円にとどまります。 一般労働者のうち、正社員数に占める割合は男性が女性の2倍です。一方、一般労働者の非正社員数では若干女性の方が多くなっています。女性は正社員比率が低く、その分男女の間に賃金格差が生じることになります。 次に、キャリアの中断です。かつて寿退社という言葉があったように、結婚を機に退職する女性はいまも少なくありません。さらには出産で辞めたりと、ライフイベントを迎えると退職したり正社員から非正社員に雇用形態を変える女性が多いのが実情です。 その様子は統計に表れています。35~39歳のあたりが女性就業率の底になるM字カーブや、25~29歳あたりをピークに女性の正社員比率が減少し続けるL字カーブがそうです。キャリアが中断すれば、その間はブランク扱いされて昇給や昇格などの機会が遅れることになりますし、正社員から非正社員に移行すれば賃金は抑えられます。 3つ目は、管理職比率の差です。先述のプロジェクトチームに出された資料では、2023年の女性管理職比率が課長級で13.2%。この数字を裏返すと、課長級の男性比率は86.8%ということになります。役職者は総じて給与水準が高いため、管理職に占める割合の差は、そのまま男女の賃金格差の要因となりえます。 最後は、就業時間の差です。賃金構造基本統計調査を確認すると、所定内の労働時間と残業時間の合計は男性の正社員が月に182時間、非正社員は174時間。一方、女性は正社員が172時間、非正社員が166時間なので正社員で月10時間、非正社員で8時間、男性より女性の方が少なくなっています。 単純に考えると、これら4点について女性を“男性並み”にすれば、男女間の賃金格差を埋めることができます。つまり、女性の正社員数を増やして男性との比率を同等に引き上げ、結婚などのライフイベントがあってもフルタイム正社員として働き続けられるようにし、管理職比率や就業時間も男性と同程度にするということです。