家が古くなっても税金は下がらない? 複雑すぎる固定資産税を調べてみた
建物の築年数がたっているのに、税金が下がらないのはなぜか―。固定資産税の納付が通知される4月から、役所などには問い合わせが殺到している。取材してみると、税額の基礎となる課税標準額(評価額)を算出する上で複雑な仕組みがあった。(デジタル編集部・川野百合子) 【計算してみた】沖縄で2階RC造を新築した場合...
評価額に影響する二つのポイント
「経年劣化した家屋の固定資産税が下がらないのはおかしいのではないか」。こうした問い合わせが那覇市資産税課に寄せられているという。担当者は「近年は特に多い。4月の3週目ごろまでは、電話対応に追われコールセンターのようになる」と話す。 家屋の固定資産税は、課税標準額(評価額)を算出し、各市町村が条例で定めた税率をかけて求める。沖縄県内の全市町村は標準税率を1・4%と定めているため、条例が変わらない限り、評価額が税額の増減を左右することになる。 では、評価額はどう求めるか。ざっくり言うと、評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点でその場所に新築する場合に必要とされる建築費(再建築費)をまず算出する。これに、家屋の建築後の年月の経過によって生じる損耗の状況による減価率(経年減点補正率)をかけて求める。 このことから、評価額に影響を与えるポイントは二つある。①建築物価が上がっているか、下がっているか②何年経過しているかーの2点だ。
税額下がらない三つの可能性
経年劣化した家屋の固定資産税が下がらない理由として考えられる可能性が3点ある。 まず、評価替えの年度ではないことだ。家屋の評価額の計算には、国の定める「固定資産評価基準」が大きく影響する。これは3年に1度見直され、評価基準が変わる「基準年度」から3年間は同じ税額が通知されることになる。2024年度は評価替えのある「基準年度」になるため、2026年度までの家屋の税額は変わらない。 2点目は、経年数による減価が下限の20%に達したという可能性だ。固定資産評価基準では、建物の用途や構造によって減価率や期間が定められている。例えば、RC造住宅であれば60年、一般的な木造住宅では約15~20年(木材による)で減価率が下限の20%に達する。 最後に考えられるのが、物価上昇による影響。評価額を計算する際、建築資材費などの上昇率が、経年劣化による減少率を上回る場合は、計算上、評価額は増加することになる。 ただし、3年に1度の評価替えによって算出された新しい評価額が、評価替え前の価格を上回る場合、原則、評価替え前の価格に据え置くことになっている。新たな評価額か、以前の評価額か、いずれか低い方が評価額となり、税額計算の基礎となる。