【記者ルポ】2号機打ち上げ失敗も「次が事業成否のカギ」民間ロケット『カイロス』3号機はいつ飛ぶ?和歌山・串本の民間飛行場が抱える課題も―
和歌山県串本町の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げられた、小型ロケット「カイロス2号機」。人工衛星の軌道投入に成功すれば、民間初となる快挙が、打ち上げ後に異常が発生して「飛行中断」となり、ミッションは失敗に終わった。いったい何が原因なのか、浮かび上がった課題とは…。打ち上げ成功への期待とともに、『3号機』は事業成否の命運を握る重要局面を迎える。(報告:楠下一輝)
■歓喜から落胆へ…発射1分20秒後に“回転”、その後破壊措置「原因は調査中」
「飛んだ!!」「ばんざーい!」 2024年12月18日午前11時。カイロス2号機が炎と煙を吹き出しながら、天空への舞い上がっていく。 3月にカイロス初号機が打ち上げからわずか5秒で爆発し墜落してから、わずか9か月。当初は12月14日の予定が、上空の強風による2度の延期を経て、打ちあがったロケットの姿に、串本町の至る所で、人々が歓喜に沸いた。
しかし、打ち上げからわずか1分20秒後、ノズルの駆動制御に異常が発生する。読売テレビがとらえたカメラでは、ロケットが回転して進む様子が確認された。 計画していた飛行経路からズレたことから、打ち上げから3分7秒の時点で「飛行中断」となり、ロケットは上空で破壊措置がとられ、歓声は落胆へと変わった。 ロケットを開発した「スペースワン」の豊田正和社長は、その後の記者会見で、「今回のミッションは、衛星を軌道に投入させる最終段階まで達成させることができませんでした」と謝罪した。原因については、「対策本部を立ち上げ、調査中」としている。
■なぜノズルに異常?原因次第では3号機に1年以上も…「イージーミス許されない」
異常が発生した「ノズル」とは、ロケットの燃料が噴射する吹き出し口で、ロケットが進む向きを決める重要なパーツだ。 和歌山大学の秋山演亮教授(宇宙政策)は、「ノズル」に異常が発生したと考えられる原因として、大きく分けて以下の3点を挙げた。 ①ノズルを制御するモーターの部品そのものに問題 ②ロケットが飛行中に進む方向などを把握するシステムに問題 ③設計段階での設定に問題 順調に解析が進めば3か月ほどで原因が判明するのではないかという見解だが、原因次第ではパーツの変更が必要になり、新たなパーツの設計や製造、さらに試験を行わなければ実機に搭載することはできない。 そのため、3号機の打ち上げは、「どれだけ早くとも初号機から2号機の打ち上げまでにかかった9か月と同程度、さらには、それよりも長い1年以上になる可能性もある」(秋山教授)という。 千葉工業大学の和田豊教授(航空宇宙工学)は「ロケットの打ち上げに関しては世界的にみても、初号機・2号機での成功は数%程度で、比較的順調ととらえることができる。カイロスは結果として、初号機と比べて2号機は前進しているので、3号機の結果はスペースワンにとっても、現実的に宇宙事業が成り立つのか見極められるタイミングになってくるので、イージーなミスは許されない状況と考えているのではないか」と指摘する。