なぜ大迫は日本人初「2時間5分台」を実現したのか?その4つの理由
まずは「レースの選択」だ。大迫は初マラソンにペースメーカーのいないボストン(昨年4月)を選ぶと、トップ集団でレースを進めて、2時間10分28秒の3位と好走した。2レース目の福岡国際(昨年12月)は2時間7分19秒(当時・日本歴代5位)。今回のシカゴは2時間5分50秒と確実にステップアップしている。 シカゴの3週間前には世界最速レースのベルリンがあったが、「ベルリンはちょっとペースが速すぎる。身の丈にあったレースを選ぶことが大切だと思います」と大迫はシカゴを選んだ。ちなみに今回のベルリンはエリウド・キプチョゲ(ケニア)が2時間1分39秒の世界記録を樹立している。日本人はメジャーレースに参加したがる傾向にあるが、大迫はトップ集団で勝負できるレースを選択して、優勝争いの経験を積むことを意識してきた。その結果、いずれのレースでも3位に食い込んでいる。 過去3レースにおける優勝者とのタイム差は、ボストンが51秒、福岡国際が1分31秒、今回のシカゴが39秒。シカゴではボストンで敗れたジェフリー・キルイ(ケニア)とゲーレン・ラップ(米国)に先着しており、世界トップレベルと「戦えた」という印象がかなり強い。 次は「タイムの意識」。大迫に目標タイムを聞いても答えてくれない。なぜなら、タイムを目標にしていないからだ。今年7月に取材したときは、「この数年は記録を意識して、いいレースはできていないので、どちらかというと勝負に徹して、記録のことは忘れて走るつもりです。持っている力を出すことができれば好タイムは出ると思っています」と話していた。タイムはついてくるという考えだ。大迫がタイムを意識するのは40kmを過ぎてからになる。 日本人は腕時計でラップタイムを確認しながら走る選手が多い。これは駅伝でついた悪いクセともいえるだろう。駅伝は基本、単独走になるが、マラソンの場合は集団でレースが進む。ペースが速いと不安になり、遅いとイライラしてしまう。タイムを意識しすぎると、精神的に疲労してしまうのだ。なるべくストレスフリーで走り、大迫のように終盤の勝負どころまでパワーをためた方がいい。