米関税、大恐慌以来の水準も トランプ氏に身構え、貿易戦争を懸念
【ワシントン時事】トランプ次期米大統領が20日に就任し、高関税政策が動きだす。 トランプ氏は輸入品への10~20%の一律関税や60%の対中関税などを主張。実現すれば、米国の関税率が1930年代以来の高水準になるとの試算もある。中国や欧州などとの貿易戦争や、貿易縮小による各国経済への打撃が懸念されている。 「かつて関税は米国の大きな富を生み出していた。関税によって債務を減らし、再び米国を豊かにする」。トランプ氏は1日、SNSで高関税政策を重視する姿勢を改めて強調した。 柱となるのが、輸入品への一律関税と、最大の貿易赤字相手国である中国への追加関税だ。米独立系シンクタンク「タックス・ファンデーション」は、これらが実現すれば、米国の平均関税率は現行の2%強から18%近くに跳ね上がると試算。大恐慌期に高関税による産業保護を図ったスムート・ホーリー法施行後の1934年以来の高水準だ。 米国では関税を課す権限は原則として議会にあるが、トランプ氏は議会の承認なしでも一律関税導入は可能とみる。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、安全保障上の脅威に対応する権限を付与する国際緊急経済権限法などの法律を挙げ、「実務的にも法律的にも、実行への障害はほとんどない」との見方を示す。 ただ、関税引き上げは相手国からの報復を招き、世界経済全体に打撃を与える恐れがある。国際通貨基金(IMF)は、世界的に関税が引き上げられた場合、世界の国内総生産(GDP)を2025年に0.8%、26年に1.3%押し下げると説明。米経済への悪影響は「より大きくなる」と警告した。 トランプ氏はまた、相手国に譲歩を迫ったり自国の要求を通したりする「ディール(取引)」にも関税をフル活用する構えだ。就任を待たず、不法移民や合成麻薬の流入への対抗策として、中国に10%、カナダとメキシコに25%の関税を課すと打ち出した。 カナダとメキシコは、米国への協力姿勢を示しつつ報復措置も検討。中国は反発を強めており、関税や貿易制限をかけ合う貿易戦争への懸念が増している。ピーターソン国際経済研究所のゲーリー・ハフバウアー氏は「トランプ氏は貿易を通じて相互に利益を得るという考えを捨て、通商を国家間の争いの道具とみている」と指摘。自由貿易が大幅に後退すると予想している。