中国市場で「グッズ経済」が急成長 日本企業にとって新たな対中輸出産業と成り得るのか
中国の若者たちが初音ミクに関する情報を交換しあう場として立ち上げられた「Mikufans」。このネット空間が前身となり2009年、漫画、アニメ、ゲームなどの動画を提供するプラットフォームの運営会社、ビリビリが創設された。ビリビリの社名は、ライトノベル原作のアニメシリーズ『とある魔術の禁書目録』ヒロインにして外伝作品『とある科学の超電磁砲』の主人公、御坂美琴のニックネームからつけられたもので、1989年生まれの創業者、徐逸氏が名付け親だ。
キングソフトネットワークの創業者の一人であった陳睿氏が2014年、エンジェル投資家、CEOとしてビリビリに参加したことで、事業会社としての体を成し、急成長、2018年にはNASDAQに上場、2021年には香港市場に上場した。2023年12月期の売上高は225億元(4658億円、1元=20.7円)、粗利益ベースでは54億元(1118億円)の規模の企業に成長している。 ビリビリが一つの核となって始まった日本のオタク文化の輸入、国内でのオタク文化の育成だが、これらはいろいろな形で新しい需要を生み出している。その一つが漫画・動画、ゲーム、アニメ・特撮、小説、アイドルといった二次元情報などから派生するグッズに対する需要であり、谷子(グッズ)経済として、本土市場では現在、その関連企業が相場の一つのテーマとして大きな注目を集めている。 具体的な銘柄を挙げれば、文具の大手メーカーで二次元情報関連グッズの強化を図っている広博股フェン、玩具、ゲームメーカーでキャラクター商品を手掛ける実豊文化、アニメーション制作やその関連グッズの販売を行う奥飛娯楽などで、今回本土市場の上昇相場の起点となった9月18日から12月2日にかけて、株価(終値ベース)は順に260%、144%、79%上昇している。
米国の保護主義への対抗策として中国への輸出拡大が鍵に
中商産業研究院が11月28日、グッズ経済に関する分析レポートを発表しているが、それによれば、バッジ、カード、ペンダントなどの二次元情報関連キャラクターグッズの市場規模は2020年には約1065億元(2兆2046億円)であったが2023年には2445億元(5兆612億円)に拡大、2025年には3500億元(7兆2450億円)に達すると予想している。二次元情報はAI、VR、ARとの相性が良い。新技術の急速な発展と普及によって二次元情報関連の需要は急拡大するはずだ。 米国のトランプ次期大統領は11月25日、麻薬流入への対抗措置として中国製品に10%の追加関税を、不法移民、麻薬の流入への対抗措置としてカナダ、メキシコに25%の関税を課すと宣言した。30日にはBRICS加盟国に対して米ドルの基軸通貨性を揺るがすような行動に出れば100%の関税を課すとSNSを通して発言している。米国が自由貿易を阻害し、自国企業を優遇する政策を打ち出すとすれば、米国が最大の輸出先である日本にとっても、これは大きな脅威となりそうだ。あからさまな米国の保護主義が4年で終わるのか、あるいはしばらく続くのかはわからないが、少なくも米国への輸出減少に対する対応策を考えておく必要はありそうだ。 複雑な問題を抱えるEUは政治経済の不安定化が進みそうである。ASEANは既に中国の貿易圏にほぼ組み込まれており、日本の挽回の余地は小さい。必然的に、市場規模が大きく、依然として成長率の高い中国への輸出拡大が重要となるだろう。中国経済は不動産不況により成長率が落ちているとはいえ、IMFの最新の予想では中国の2024年における成長率見通しは4.8%、2025年は4.2%としており、米国の2.8%、2.2%、日本の0.3%、1.1%と比べ依然として十分高い。