中国市場で「グッズ経済」が急成長 日本企業にとって新たな対中輸出産業と成り得るのか
日本が優位な部分での新しい輸出産業を育てられるか
一方、中国側統計から見た日本の輸入シェアは、2019年には8.3%あったが、2024年1-10月では5.9%までシェアを落としている。2019年時点の日本の順位は台湾、韓国に次ぐ僅差の3位であったが、2024年1-10月では台湾の8.3%、韓国の6.9%、米国の6.4%に次ぐ大差の4位である。 電機産業において、台湾がTSMC、ホンハイ、韓国がサムスン電子、LGエレクトロニクス、SKハイニックスなどの大手電子部品メーカーを有するのに対して日本は、半導体製造装置、電子部品などで有力企業を有するものの、規模の点では大きく見劣りする。日本が強みを持つ自動車産業では、中国の新エネルギー自動車が国内市場を圧倒しつつあり、2023年には輸出金額で中国にトップの座を奪われるなど、グローバル市場でも日本企業は中国企業にシェアを奪われつつある。 中国は半導体産業、新エネルギー自動車産業などの戦略的新興産業に対して、国策として強力な支援政策を実施している。今後、自動運転技術、低空経済、AIといった市場規模が大きく広がりそうな分野においても、日本が国際競争力を保つのは容易ではない。多くの日本企業はリスクを取ることに消極的で、変化を嫌う傾向が強く、巨額な投資をタイムリーに勇気をもって決定しなければならない新興産業には不向きかもしれない。 一方で、日本が国際競争力を保てそうな分野もある。たとえば、ユニクロを経営するファーストリテイリングは店舗規模では既に中国が日本を上回るなど、競争条件の厳しい中国市場でも成功を収めている。顧客の需要の変化に敏感で、調達から販売まで、些細な部分にまで注意を払うなど、他国企業がマネできない緻密な経営を行っている。 日本の若者文化は世界でも高い評価を受けているが、細かい部分でのこだわりの強さが特異な文化を生み出しているのではなかろうか。日本の立ち位置を冷静に分析し、日本の優位性を伸ばすことができれば、新しい輸出産業を育てることができると思う。 文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。