【解決策はライドシェアだけじゃない】スマホの移動データを地域交通再編の切り札に、個人情報保護などハードルも
■ スマホが移動データ収集の切り札に そのため、市町村道においては、市町村道を移動するクルマのドライバーや歩行者などが所持するスマホから移動データを集める可能性に期待が高まっている。だが現状ではJARTICとして、スマホからこうしたデータを関連事業者から直接提供を受ける体制が整っていないという。 行政機関が運用する公的な交通情報において、スマホから集めたデータを活用することについては、個人情報保護の観点や、データが海外の事業者に提供される場合に生じかねない安全保障上の課題など、様々なハードルがあるものと推測する。 その一方で、今回も別の講演で紹介されたように、能登半島地震では道路交通に関する公的な情報収集が遅れ、適切な情報配信が十分にできなかったという反省もある。こうした状況を踏まえて、特に有事において、どのようにしたらスマホからもデータを集め、スピーディに道路交通状況を把握できるようになるかを、国は検討するべきではないだろうか。 別の視点からも、国によるスマホを活用した移動に関するデータの利活用が期待されている。 交通安全環境研究所(交通研)は6月13日、東京大学伊藤国際学術研究センターで開催した「令和6年 講演会」の中で、とても興味深い発表をしている。題目は「地域交通計画検討支援のための取組」だ。
■ 研究が進む交通計画策定支援ツール 交通研は1950年に旧運輸省の研究所として発足した組織で、国が行う自動車などの陸上交通にかかわる施策立案や基準策定のための試験や研究、自動車などの型式指定の審査などを行っている。 今回発表した取り組みは、自治体や協議会が、交通計画を検討する際に比較的手軽に使えるソフトウェアの開発を目指すというものだ。 具体的には大きく3つのステップを踏むという。 まず、各地域における既存交通や人口分布など基礎データを収集して、どこからどこへ、いつ、何人くらい移動したいと考えているか、潜在的な移動の需要を割り出す。 次に、どうすれば潜在需要が顕在化するのかを推定する。この段階でスマホなどを使って実態を把握することになる。交通研の担当者は、情報を収集するコストは高額になるという認識を示した。 その上で、地域交通を変革する様々なシミュレーションを実施する、という流れだ。 交通研の担当者によれば、こうしたソフトウェアを国として開発することが決まっているわけではない。ただ、同様のソフトウェアは民間企業も含めて現時点では他に存在しておらず、交通研としては地域交通の再編に役立つものと考え、研究を進めているという。