【解決策はライドシェアだけじゃない】スマホの移動データを地域交通再編の切り札に、個人情報保護などハードルも
■ TomTomトップが語った「地図データ」のオープン化 スマホの移動データに密接に関わる主要な事業者としては、地図アプリを提供している米グーグル(親会社はアルファベット)とアップルだ。 このうちアップル向けに地図情報を提供しているのが、オランダのTomTom(トムトム)である。 そのトムトムが日本市場向けに、特に自動車業界を念頭においたプレゼンテーションを毎年実施している。今年も6月19日に都内で開催され、筆者もメディア関係者のひとりとして各種講演を視聴し、登壇者やトムトム関係者らと意見交換をした。 注目を集めたのが、トムトムも参加するオープンソースの地図データ推進団体「Overture Map Foundation」に関する発言だ。Overtureには、トムトムのほか、マイクロソフト、AWS(アマゾンウェブサービス)、メタ(旧フェイスブック)も参加している。 プレゼンテーションの冒頭、登壇したトムトムの最高経営責任者(CEO)のHarold Goddijn氏はOvertureについて、「(ユーザーの)コストメリットを考えれば(地図データについてはライバルと競争するのではなく)協調領域とすることが重要であり、低コストでサービスを提供できるようにするべき」という考えを示した。 その上で、トムトムとしては、AIを活用する音声認識や電気自動車(EV)に関する新しい領域で事業を拡大していけると期待を表明した。 続く招待講演の中で、筆者として最も興味深かったのが、日本道路交通情報センター(JARTIC)のプレゼンテーションだった。
■ 市町村道のデータを集める方法がない JARTICは一般には、ラジオやテレビのニュース番組などで道路交通情報を提供している組織として知られているが、カーナビ向けのVICS(ヴィークル・インフォメーション・アンド・コミュニケーション・システム=道路交通情報通信システム)も提供している。 JARTICによれば、交通情報の基礎データは、都道府県警察からの各種情報や、高速道路会社などが道路に設置したトラフィックカウンターと呼ばれる交通量の計測データやカメラの画像データを定期的に収集している。これらのデータを収集する頻度は1分ごと、または5分ごとだという。 近年は、通信のコネクティビティ技術が発展したことで、収集できるデータが多様化している。また、ドライバーが求める情報もより詳細に、多様になっているという。 その上で、データの取り扱いに大きな課題が出てきている。その1つが、道路の総延長として最も長い、市町村道のデータを収集する方法がほぼないことだ。