戸田奈津子「会った女性みんながメロメロに」ケヴィン・コスナーが愛された理由とは…90年代ハリウッドを席巻した大スターの見るべき1本
長場雄が描く戸田奈津子が愛した映画人 vol.41 ケヴィン・コスナー
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
時代を席巻した大スター
1990年代に何度も映画のプロモーションで来日していたので、私もずいぶんお仕事をご一緒しました。会った女性がみんなメロメロになるくらい、魅力にあふれるスターでね。記者会見ではユーモアを交えつつ自分の意見も言うし、最後にはしっかりかっこいい言葉で締めくくるので、期せずして満場の記者から大拍手が湧いたほどです。 記者会見に集まるマスコミの人たちは、大抵は”クールなプロ”という顔をしているので、こういう反応は滅多にないのです。 『アンタッチャブル』(1987)や『ボディガード』(1992)などたくさんの映画に出ているけれど、私が好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)。ゴーストが出てくる不思議なファンタジーで、描かれる家族愛が感動的でしたね。 俳優だけでなく監督やプロデュース業にも積極的で、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)ではアカデミー作品賞や監督賞を受賞しています。それまでのアメリカ映画は字幕を敬遠して、先住民でもフランス人でもドイツ人でもみんな英語を喋るというインチキをしていましたが、ケヴィンは、劇中に登場するネイティブ・アメリカンに自分たちの言葉を話させて、セリフに英語の字幕をつけるという画期的な演出をしたの。 彼の功績は大きかったと思います。その後の彼は監督作やプロデュース作が興行的に失敗したこともあり、主演映画がないのが残念ですが、一時代を席巻した大スターだったことに間違いはありません。 語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢
『フィールド・オブ・ドリームス』(1989) Field of Dreams 上映時間:1時間47分/アメリカ アイオワ州で農場を営むレイ・キンセラ(ケヴィン・コスナー)は、ある日とうもろこし畑で「それを作れば、彼がやってくる」という言葉を聞き、野球場の幻を見る。 声に従い畑を野球場に作り変えることを決意したレイは、周囲からの反対を押し切り、妻(エイミー・マディガン)のサポートを得てついに完成させる。そしてある夜、野球場にひとりの男性の姿が。不仲のうちに亡くなった父が大ファンだった、大リーグの名選手“シューレス”・ジョー・ジャクソン(レイ・リオッタ)だった…….。 ウィリアム・パトリック・キンセラの小説をフィル・アルデン・ロビンソンが映画化。アカデミー賞では作品賞を含め3部門にノミネートされた。 ケヴィン・コスナー 1955年1月18日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。下積みを経て『ファンダンゴ』(1985)で主演を務める。『アンタッチャブル』(1987)で一躍注目を集め、『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)『ロビン・フッド』(1991)『JFK』(1991)『ボディガード』(1992)『パーフェクト・ワールド』(1993)など話題作に出演。 監督・主演・製作を務めた『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)ではアカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞した。
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