機能面の成熟の裏でチップセットの統合が進む、AMD「次世代FPGA」の動向は?…オートモーティブワールド2024
(写真:レスポンス)
SDVやAIに関する話題が耐えない昨今、それらを実行させて走らせるには当然、ハードウェア側の要件や処理能力がカギで、場合によっては限られてくるところ。一昨年にFPGA(Field Programmable Gate Array)の大手であるザイリンクスの買収統合を完了させた半導体・マイクロプロセッサ・GPUの巨人、AMDの動向は気になるところだ。 オートモーティブワールド2024のブース内でもっとも要素技術的な展示は、VERSALのSoCを載せた、いかにも評価ボードのFPGAモジュールによる「ZebraのプラグアンドプレイAI推論デモ」だ。GPUが生成したニューラルネットワークをまったく手を加えることなく、CPU処理に直接落とし込めるという。独自のキャリブレーション技術はあるだろうが、ザイリンクスからAMDへと一気通貫することで、効率の高いAI処理が可能になったということだ。ザイリンクスのFPGAを手がかりにオートモーティブに本格参入を果たしたAMDは、新車の台数規模よりも遥かに巨大な数量を扱うITコンシューマー製品において、インテルやサムスン、NVIDIAに伍して、まぎれもなくコストパフォーマンスの高さで定評を得てきた企業であることは、留意しておきたい。 ZebraプラグアンドプレイAI推論デモ より具体的な応用例として、三菱電機による車室内モニタリングシステム、既存のDMSの延長上といえるデモが興味深かった。赤外線カメラによる検知と処理自体はすでに広く用いられ、スバル車などでドライバー認証とシート位置の自動調整に使われているが、FPGAとAI処理によってより複雑かつ高精度の機能に発展しうる。 このデモでは赤外線カメラで、乗員の頬から口にかけて血液中のヘモグロビンに吸い込まれる赤外線の反射率をモニターし、脈拍数をほぼ正確に計測していた。つまり生体情報を非接触でとれるのだ。もちろん西日が差すとかファンデーションの濃淡といった外乱要素は考えられるが、それらを選り分けるアルゴリズムを磨くことでほぼ克服しているという。アプリを通じて、ドライバーの体調変化を運転支援システムのレベル設定に反映するのはもちろん、さらにはミリ波レーダーや外部カメラなどで、ドライバー以外の乗員の様子や車外の天候状態といった他のセンシング情報をも統合できる。急病など異常時に緊急停止させることも、幼児置き去り検知といった多機能化も考えられる。 法規上、乗員をモニターするシステムはアセスメントやルールとして変更・進化していくだろうし、拡張性の高いFPGAを用いればアップデートにも対応可能となる。ちなみに室内エアコンの「霧ヶ峰」も赤外線センサーで暑い・寒いといった生体情報を検知するが、検知に時間がかかり過ぎる嫌いがややあると説明担当者に伝えると、社内では事業部門間でシナジーを促すべく、赤外線カメラ置換によるセンシング自体の高度化は、話題レベルながらゼロではないのだとか。
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レスポンス 南陽一浩