[選手権]得点もPKストップも…「本当にいい仲間に」松山北、準決勝で負傷した主将の想いを繋いだキャプテンマーク
[11.10 選手権愛媛県予選決勝 新田1-1(PK1-4)松山北 ニンスタ] 松山北高の主将は少し申し訳なさそうに話しながらも、仲間が繋いでくれた想いに胸を張った。「今日はいいとこ取りみたいな感じになってしまったんですけど、本当にこのチームでキャプテンをして、本当にいい仲間に支えられてよかったなと思います」。この日は“裏方”に回っていたDF末光瑛翔(2年)だが、試合後は優勝の喜びを語る場内スピーチなど、ユニフォームに着替えてチームの顔としての役割を堂々とこなしていた。 【写真】「全然違う」「びびるくらいに…」久保建英の9年前と現在の比較写真に反響 悪夢は準決勝の前半に襲った。左SBで先発していた末光が左ひざを負傷。そのまま途中交代となった。「やった瞬間はそんな大怪我だとは思わなかったんですけど、診断名を聞いて、結構すごいんだなと思いました」。医師から告げられた症名は前十字靭帯損傷。手術を必要とする大怪我だった。 全国大会まであと一つと迫った中での非情な通告。気が動転する中で、真っ先に電話をしたのが、愛媛FC U-15から一緒に進学してきたMF松永悠吾(2年)だったという。「一番信頼している選手だからこそ、一番最初に頼むぞという気持ちを伝えたかった」。普段とは違う震える声で松永もすべてを理解したという。 すると決勝ではそれまで末光が巻いていたキャプテンマークがキーアイテムになった。末永から直接託されていた松永はスコアレスで迎えた後半32分、MF森隼人(3年)のスルーパスに反応。「今日は瑛翔の分も背負って絶対に決めるという思いでプレーしていた」。GKとの1対1を冷静に制して先制点が決まった。 試合はその後同点とされて延長に突入し、松永は延長戦に入ってから足をつらせたために途中交代となったが、こちらも愛媛U-15からプレーした僚友、FW河窪紘夢にキャプテンマークを託してピッチをあとにする。そして運命を決めるPK戦。キャプテンマークはGK市中磨生へと渡されることになった。 市中もその意味を十分に理解していた。キャプテンマークは準々決勝で破った帝京五高戦でも、PK戦の前に末光から託されたラッキーアイテムだった。「チームから任されたと感じたので、自分が止めるしかないという強い決意がみなぎりました」。市中は新田高の1人目のシュートを完璧に読み切ってストップ。3人目のシュートも失敗に追い込み、8年ぶり愛媛県制覇の立役者になった。 チームは3年生の多くが引退した夏場以降、選手個々が自覚を強めたことで今大会の勝ち上がりに繋がったと自信を持っている。末光は全国大会でのベンチ入りもできない見通しだが、そこもチームとして前向きに準備していきたいところだ。「僕は足がつってしまって少し情けなかったけど、河窪くん、市中くんと繋いでくれた。最高のチームだなと思います」(松永)。大舞台でもより深まった絆を見せつける。