学園職員しながらノンフィクションを発表 玉居子精宏さんの二刀流 100歳時代の歩き方 私の後半戦
■編集経験生かし
《10年前に学園職員になった》
編集の経験を生かせるのと、しっかりした組織で働きたかったからです。ノンフィクションは丁寧に築き上げた人間関係を基に作り上げていく。組織で仕事をするのでも、丁寧な人間関係を基にやりたかった。この学園の広報誌はしっかりした作りで、自分に合っていると感じ、このような所で働きたいと思いました。
《学園職員としての仕事は楽しいという》
学園の教員に取材したり、研究者や専門家にインタビューしたりすることが、こんなに知的でおもしろいとは知りませんでした。早川書房の編集者のときは、自分がまだ何も書いていない劣等感があって、積極的に原稿を依頼することができませんでした。今は自分も少しは書く経験を積んで心に余裕ができたのか、いろいろな人に原稿をお願いできるようになりました。自分を凌駕(りょうが)する知識に接するのは、とても刺激になります。
《このスタイルを続けていくつもりだという》
私が敬愛する、従軍経験などを描いた芥川賞作家、古山高麗雄も長く編集者を続けていました。このスタイルだからこそ、私は知的な刺激を受けながら、戦争の時代の個人の生き方を探るといった自身の関心ごとを追求できます。「二足のわらじ」だなんて思っていない。自分にとってはこのスタイルが自然で、必然のことです。次回作の取材にも取り掛かっています。
◇たまいこ・あきひろ 昭和51年、神奈川県生まれ。早大卒業後、早川書房に入社。退職後、戦争があった時代の取材を始め、2年間、ベトナムで暮らす。帰国後は学園職員などをしながら、取材や執筆に取り組む。著書は記事にある2冊のほか『戦争小説家 古山高麗雄伝』。