【特集「やっぱりドイツ車が好き!」①】 ハイエンドサルーンの確固たる矜持を見た【BMW 7シリーズ × アウディ A8】
外観に負けず劣らず「振り切れた」インテリア
エクステリアに目を奪われるが、7シリーズはインテリアの攻めっぷりも相当なものだ。エクステリアにも相通じるマテリアルのテーマのひとつはクリスタルということで、前席はぐるりと透明のオーナメントが張り巡らされる。 テーマごとに異なる滑らかなイルミネーションとなるだけではなく、ADASやハザード操作などとの連動で注意喚起を促すなど、機能面での進化にも滞りはない。 後席に至ってはイルミネーションの必要も感じないほど賑々しい。空調やシートの調整など多岐に及ぶ各種操作系はドアコンソールのタッチスクリーンに一括し、オプションのリアエンターテインメントスクリーンは天井からせり出す31.3インチの一枚物だ。 7シリーズのボディは従来のロングボディに一本化され、その車格は先代のゴースト並みに大きくなっている。昨今のデザインコンセプトに沿ってエッジが丸く面取りされた後席の掛け心地は肌触りが優しく、オットマンも備わるリクライニング機能を用いて眼前の巨大なスクリーンを眺めながらの寛ぎ感は、アルファードあたりよりも全然振り切れている。
洗練されたシャシのセットアップ。旋回性にも優れる
そんなのBMWじゃないという意見もあるだろう。が、7シリーズの真の驚きはこれらを踏まえた上で、走りが真のBMWであることだ。しかもパワートレーンの種別を問わない。BEVのi7でさえそう思わせる。 個人的には12気筒を搭載した先代のM740iは今でもベストなBMWの1台だが、i7のM70は見事にその後継になり得ている、そんな印象だ。 取材車は逆にもっとも守旧的なパワートレーンの740iだったが、これもまた見事なまでにBMWである。もちろんお約束のストレート6云々もあるものの、巨体を動かすには必要十分なパワーに合わせてすっきり優しく躾けられたシャシのセットアップがまた素晴らしい。 このクラスのご多分に漏れず電子デバイスが山盛りで3200mmオーバーのホイールベースも感じさせないほどの旋回性を誇る一方、そういった調味料に依った味付けとはまったく思わせないノド越しの良さがある。 元来、BMWの乗り味は高い解像度や緻密な応答性に裏付けられた繊細さこそが軸だったように思う。だが昨今はダイナミクスの幅が広すぎるあまり、その繊細さが薄れてしまうことも珍しくない。左様にハイテクの塊だが、7シリーズのドライバビリティには旧き佳きBMWの微妙なタッチが宿っているように思う。それが得も言えぬ心地よい肌感を生み出していることは間違いないだろう。