「ゴミうんち展」で見つける循環型社会へのヒント…犬のふんがアートに?
犬の排せつ物でアート作品
臭いものには蓋をして、水に流して、ハイ、終了――。そんな現代人の生き方に反省を促すようなユニークさにあふれる「ゴミうんち」展が、東京・六本木の「21_21 DESIGN SIGHT」で開かれています。 ゴミや大小便など、通常は人々が目を背けて、知らない間に葬り去られてしまう存在に光を当て、廃棄・排出を重視する現代社会をよりよい循環型社会に転換させるためのヒントが詰まっています。展示会のタイトルはいささか驚きですが、アートやファッションなど多様な切り口で真面目に環境問題に迫っています。 様々な動物の排せつ物を使って、その動物そのものの形状を再現した彫刻家・井原宏蕗さんの仕事はまさに衝撃的です。乾燥させた動物のふんで排せつ元の身体の形を復元し、漆などを塗ってコーティングしているのです。 会場には多くの動物がたたずんでいましたが、ふんで作られた犬は漆で黒光りし、新たな生命体に変身したかのよう。完全にパッキングされているため、異臭が漂うわけでもなく、非常にクールな見た目の作品です。 アメリカの写真家・マイク・ケリーの「Life Cycles」は、飛行機のライフサイクルを表現した写真シリーズです。 数々の製造工程を経て飛行機が誕生する場面から、砂漠の真ん中にある「飛行機の墓場」と呼ばれる場所で廃棄されるまでの一部始終を、上空のヘリコプターから撮影しています。「飛行機の一生」に思いを馳せることは一般人にはなかなかないだけに、その写真は実に新鮮です。 ケリーが残した示唆に富むコメントも紹介されています。「多くの人にとって飛行機とは、混雑したコンコースや狭い座席、小さな窓という体験かもしれませんが、上空からの視点は、空の旅を支える複雑なインフラの意味や、人間の集合知によって気軽な地球の旅が実現できていることを教えてくれます」
割れた陶器を楽しく再生
「純天然染色」という技法のジャケットを提示したのは、デザイナー・吉本天地さん。自身が手掛けるファッションブランド「amachi.」のコレクションの一つで、染色工程で化学的な処理を一切行っていないため、日光で色あせ、かんきつ類の酸でも色が抜けるそうです。栗のいがとログウッド(アカミノキ)で染められており、展示会期中もワークショップなどを通して、少しずつジャケットの色が変化していくそうです。 一般的には衣服の価値が最も高いとされるのは新品の状態です。吉本さんの衣服は、周辺環境からの影響を受けて状態が変化する過程に積極的な価値を見いだしています。 割れて「ゴミ」になってしまった陶器などを薪窯でもう一度焼き上げ、陶器に新たな価値を生み出すプロジェクト「サイネンショー」を手がけたのは、陶芸家・松井利夫さん。釉薬をかけ直したり、複数の陶器を積み重ねたりして焼かれた器類は、変形したり、くっついたりしています。 そもそも、予想できない窯の中の変化「窯変」が陶器の魅力の一つですが、松井さんは「2度目の窯変」を来場客に楽しみながら見てもらえるよう工夫しており、リサイクルの可能性を感じさせてくれます。