ラグビーTL開幕戦にファン殺到!復権狙う東芝が昨季2位サントリーを撃破。”闘将”リーチ、松島幸太朗らW杯戦士は、そこに何を感じたのか?「子供達の憧れの存在に」
大外で余っていたウイング松岡久善へ、センターのリチャード・カフィから飛ばしのロングパスを通された直後だった。東芝が勝ち越すと誰もが思った刹那に、急加速して約20メートルの距離を一気に詰めた松島が一撃必殺のタックルを一閃。ギリギリのところで、ボールをタッチラインの外へと押し出した。 その後に2トライ2ゴールを奪われ、何とか1トライ1ゴールを返すも19-26で敗れた試合後の取材エリア。2年ぶりの奪冠を狙うサントリーの主力として悔しさを募らせながらも、日本ラグビー界の流れを変えた日本代表の一員として抱く、偽らざる思いを松島は明かしている。 「この寒さのなかを観に来てくださった、ファンの方にはすごく感謝している。こうした環境でプレーできるのは、選手にとってすごく幸せなことなので」 松島自身もパナソニックと対峙した2015-16シーズンの開幕戦で、秩父宮ラグビー場のスタンドが1万792人しか埋まらなかった苦い経験をもっている。ブームを文化へと変えながら、ラグビーを日本に定着させる役割を担う覚悟ができているからこそ、自らが果たす役割をこう思い描いている。 「どの試合でも引き続きクオリティーの高いプレーを見せて、子供達にとって憧れの存在にならなければいけない。個人的にはMVPを狙える位置にいくことが、今シーズンの目標です」 ボールを持つ機会が少なかったと振り返ったように、リーチコールが響いたのは前後半を合わせて11回だった。 大阪・花園ラグビー場でNTTドコモレッドハリケーンズと対峙する、18日の第2節へ「もっとボールタッチ数が増えるように頑張っていきたい」と視線を向けながら、自身に課せられた使命をかみしめるように、喜びを込めながらこう語っている。 「僕たち選手はひたむきにプレーするしかない。今日は東芝らしいゲームができて、サントリーも素晴らしいゲームをしたので、さらにラグビーに興味をもってくれたファンの方が増えたと思う。個人的にまずは東芝でしっかりプレーして、優勝へ向けて常にいい準備をしていくこと。代表に関してはゼロからのスタートになるので、過去のことは忘れて、もう一回アピールしていきたい」 16チームが1回戦総当たりで対戦する今シーズンのトップリーグ。昨日の友は今日の敵、とばかりに歴史を作った日本代表の盟友たちと今度は切磋琢磨しながら頂点を目指し、本当の意味での文化を浸透させていく使命をも担った戦いは5月9日まで、全国30のスタジアムで繰り広げられていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)