ラグビーTL開幕戦にファン殺到!復権狙う東芝が昨季2位サントリーを撃破。”闘将”リーチ、松島幸太朗らW杯戦士は、そこに何を感じたのか?「子供達の憧れの存在に」
秩父宮ラグビー場のスタンドには、ほぼ満員の2万1564人の大観衆が駆けつけていた。立ち見席となっている北側のゴール裏こそ若干まばらだったものの、それでも7割から8割は埋まっている。若い女性や子どもを連れた家族連れも多い。昨シーズンと比べて、明らかに一変していた。 グループリーグ初戦で強豪・南アフリカ代表から世紀の大金星をもぎ取った、2015年のワールドカップ・イングランド大会の直後はどうだったのか。同年11月14日に同じ秩父宮ラグビー場にクボタスピアーズを迎え、47-3で快勝した2015-16シーズン開幕戦の観客数は1万1085人だった。 しかも、全会場のなかで最多の観客数をマークしたのが東芝対クボタであり、開幕戦におけるトータルの観客数も4万7190人にとどまった。ひるがえって今シーズンの開幕戦には、全国の6会場で行われた計8試合に9万2347人ものファンが足を運んだ。 連覇を目指す神戸製鋼コベルコスティーラーズが、50-16でキャノンイーグルスを一蹴した神戸総合運動公園ユニバー記念競技場には、開幕戦のなかで最多となる2万3004人が集結。スピードスターの福岡堅樹や“笑わない男”稲垣啓太ら、6人もの日本代表を擁するパナソニックワイルドナイツが登場した、県営熊谷ラグビー場にも1万7722人が駆けつけている。 当日券こそ完売とはならなかったものの、秩父宮ラグビー場でも前売り券は完売しているとメディアでも報じられていた。東芝だけでなくサントリーの選手たちも、刺激を受けないはずがない。ワールドカップでチーム最多の5つのトライをあげた、フルバックの松島幸太朗も心を震わせた一人だ。
7点差を追っていた前半18分。こぼれ球を判断よく自陣から前方へ大きく蹴り出し、自ら「フェラーリ」と自負するスピードで敵陣の残り5メートルまで運ぶビッグゲインに成功。流れを引き寄せたサントリーはフランカーの西川征克がトライを決め、コンバージョンも成功させて同点とした。 しかし、殊勲の西川が前半29分に危険なプレーで一発退場してしまう。数的優位に立った東芝は、看板とするフォワード攻撃をより徹底する戦法を選び、前半終了間際に勝ち越しのトライを決めて折り返す。劣勢のなかで迎えた後半7分。松島の奇想天外なプレーがスタンドをどよめかせた。 オーストラリア代表として先のワールドカップでも活躍した、センターのサム・ケレビが相手2人を吹き飛ばしながら、日本代表のスクラムハーフ流大へオフロードパス。センター梶村祐介を介して体の正面で、たとえるならば仁王立ちした状態で松島がパスを受けた直後だった。 そのまま上半身を折り曲げて自分の股間を通す形で、大外にいたウイングのテビタ・リーへロングパスを開通させた。意表を突いたノールックパスに、東芝の対応も微妙に遅れる。14人で戦うサントリーが執念で12-12の同点に追いつく熱い試合展開に、スタンドも最高潮の盛り上がりを見せた。 「とっさの判断だったんですけど、意外と上手くいきましたね。もちろん日頃から練習しているわけではないですけど、負けている状況でもあったので、スローフォワードにだけはならないように、とにかくパスをつなごう、という意識で投げました」 試合後には思わず苦笑した松島は、後半17分にもファンを沸かせている。