ホンダのHV世界販売、2030年に130万台へ倍増 次世代HVを2027年投入 エンジン車ならではの「感性」追求
ホンダは18日、2030年までにハイブリッド車(HV)のグローバル販売台数(中国除く)を現在の2倍になる130万台に引き上げる目標を発表した。コストを現行システム比で30%以上低減した上でエンジン搭載車ならではの感性価値を追求した次世代HVシステムを27年に投入し、米国を中心に販売拡大を見込む。台当たりの収益性は18年比で2倍に増えるという。足元で需要が拡大するHVの開発を継続し、電気自動車(EV)の開発原資を稼ぐ。 18日までに栃木県の研究開発拠点でHVの事業説明会を実施した。23年の中国を除くHVのグローバル販売は65万台だった。中国にも次世代HVは投入する予定だが、中国では主流のEVを中心に電動化を推進し、米国などその他の市場でHVの販売を引き上げる。 次世代のHVシステムは、現行と同様に小型車用と中型車用の2系統を展開する。エンジンは小型車用が排気量1.5リットルの新開発エンジン、中型車用が「シビック」などに搭載する同2.0リットルエンジンの改良型を使用。小型用は高い熱効率を発揮する回転域の範囲を現行型から40%以上広げる。 ドライブユニットの構造はいずれも2モーター式で現行型から変更しないが、モーターの磁石の配置の見直しやエネルギー効率を高めた電池を採用する。90キログラム(中型車用の場合)の軽量化を実現する次世代プラットフォームと組み合わせることで、燃費性能は約10%向上するという。 EVとも部品を共用化することでコストを低減する。次世代HVシステムでは従来の機械式四輪駆動(4WD)システムを電動4WDに切り替える方針。リアモーターには次世代EV「ゼロ」シリーズに搭載する最大出力50キロワットのフロントモーターを転用する。量産効果も生かし、大幅なコストダウンを実現する。 HVの市場は23年から欧米などで急速に拡大している。HVで先行するホンダやトヨタ自動車のほか、欧米の自動車メーカーもHVの商品開発を加速している。追随してくる競合他社に対し、ホンダが差別化を図るポイントが〝感性価値〟だ。代表的な機能が「ホンダS+(プラス)シフト」。ホンダのHVは電気式無段変速機(CVT)を使用しているが、新機能は加減速時に緻密にエンジン回転数を制御し、有段変速機を使用しているような乗り味を再現する。こうした制御は環境性能に不利に働くが、エンジン自体の燃焼効率を高めたことで実現できたという。回転数と同期したエンジン音をスピーカーから流すシステムや専用のメーターなども搭載する。同機能は次世代HVの投入に先駆けて25年発売の「プレリュード」から搭載する。 30年にEVの生産台数を200万台に引き上げ、40年に四輪販売の全てをゼロエミッション車にする目標のホンダ。米大統領に就任するトランプ氏がEVの補助政策を打ち切る方針を示すなど足元の市場環境には不透明感が漂うが、この目標を変える予定は今のところない。林克人四輪事業本部長も「HVの投資を急に増やしている訳ではなく、もともと開発していたものを今回披露した」と話す。 一方、40年に向けた目標を発表した当時は「HVという言葉は使えない雰囲気だった」(ホンダ関係者)という社内の様子に変化が出てきていることも事実。足元の市場ニーズに合致した現有資産を最大限生かした上で、EVへの巨額投資に耐えうる財務基盤を構築する。