韓国45年ぶり「戒厳令」で見えた 軍民主化の副作用と半世紀経っても変わらない問題点
■エコーチェンバー現象 尹氏は12月3日夜、戒厳令について説明した際、「国会は犯罪集団の巣窟だ」「国会が自由民主主義体制を崩壊させるモンスターになった」などと語った。陸上自衛隊東北方面総監を務め、情報戦などに詳しい、松村五郎元陸将は「尹氏自身が(自分と似た価値観や情報、主張だけが繰り返し流れる空間に閉じ込められる)エコーチェンバー現象に陥っていたのではないか」と語る。 ただ、尹氏がたとえ、極右系ユーチューバーの言説を信じたとしても、最高指導者の同氏には韓国随一の情報機関・国家情報院がついている。自ら、過激な主張の是非を、リアルな世界で検証する能力を持ちながら、使いこなすことができなかった。 かつて朴正煕大統領の側近だった康仁徳・元統一相は「周囲に、尹氏に直言できる人物がいない。自分の地位を維持したい人々でもあり、尹氏にアドバイスできなかったのだと思う」と語る。これは、映画「ソウルの春」で、権力欲に惑わされ、全斗煥氏をモデルにした軍人に唯々諾々と従う軍人たちの姿に重なる。(朝日新聞記者、広島大学客員教授・牧野愛博) ※AERA 2025年1月13日号より抜粋
牧野愛博