〈総裁の顔を変えればいいのか?〉いまや”所属の約半数が世襲議員”の自民党が日本経済に与えた「7つの負の連鎖」
衰退すればするほど支配を強める仕組み
このような取り巻きの財界企業を潤すような大規模な予算ぶんどりを続けていき、結局、情報通信、ゲノム創薬など医薬品、再生可能エネルギーと蓄電池、EV(電気自動車)と自動運転などの先端産業ではどんどん後れを取り、貿易赤字を定着させていく。裏金問題の「裏」は「表」の経済衰退であり、裏金問題と経済衰退は地方から中央(国)まで表裏一体となって進んでいるのである。 だからといって、いまの日本経済の衰退を克服する政策について、かつてのように自民党内で激しい論争が起きているわけではない。中選挙区制時代には、同じ選挙区でもライバルが存在し、派閥が互いに競い合っていたので、有権者を奪い合うために政策を切磋琢磨せざるをえなかった。いわゆる三角大福の時代はそれぞれが政策ビジョンを持ち、競い合う最盛期であった。 三木武夫は金権政治とは無縁で社会民主主義的な思考を許容した。田中角栄は地域格差是正を掲げ、ケインジアン的な拡張的財政政策をとった。大平正芳は宏池会を引き継ぎ、大蔵省の堅実な財政政策を志向し、国家ビジョンとしては分散型な田園都市構想を打ち出した。福田赳夫は田中角栄と対立し、大蔵省の均衡財政主義とインフレ抑制路線を代表していた。 いまや小選挙区制度の下では、そうした政策ビジョンを争う場もなくなり、裏金を含め政治資金をもって地方議員を囲い込む利益共同体を作り、世襲政治家を軸に政府の利益配分によって地域政治の独占を図っていく。劣化した政治家は政策論争をする能力に欠けているために、これから見るように「2015年体制」を形成しなければならなくなった。集団的自衛権を正当化するイデオロギーとして右翼ナショナリズムが用いられたのは、歴史修正主義という反知性主義的な低レベルの議論ですみ、旧統一教会のようなカルト集団が選挙を支援してくれる「実利」があったからである。 文/ 金子勝
---------- 金子勝(かねこ まさる) 1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て、淑徳大学大学院客員教授、慶応義塾大学名誉教授。 ----------
金子勝
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