〈総裁の顔を変えればいいのか?〉いまや”所属の約半数が世襲議員”の自民党が日本経済に与えた「7つの負の連鎖」
自民党政権が企業の救済目的で行う7つの国家事業
もちろん、それで地域経済がうまくいくわけではない。うまくいかないがゆえに、余計に締め付けが強く効いてくる。中央のおこぼれで生きていき、地域経済の自主性を失っていくと、ますます自由も失っていく。若い人たちは地域から中央に向かって出て行くばかりで、地域経済はますます衰退する。 裏金でつながる地域政治の支配と同時に、集団的自衛権の閣議決定を契機に「2015年体制」ができてくる。実は、これから述べる集団的自衛権という概念は、現行憲法上の戦争放棄との関係で自衛権の行使としては認められないという立場から、これを行使するためには憲法改正のための国会の発議と国民投票という手続きが必要であるという政府見解を歴代内閣はとってきた。 そうした政府見解を前提にして、自衛隊の存在は「合憲」であるとの立場を正統化してきた。ところが、こうした憲法に基づく秩序をたかだか「閣議決定」という内閣の行政処分によってひっくり返してしまったのである。 その意味で、「2015年体制」は「静かなクーデター」によって誕生したと言ってよいだろう。そして「2015年体制」は、前述した地域政治の支配を全国化した面を持っている。中央(支配)と地方(従属)の関係が、同心円のようにアメリカ(支配)と日本(従属)の関係に拡大しながら、日本全体も経済の自主性の喪失と衰退とともに、民主主義と自由を失っていくのである。 衰退する地域経済が中央からのおこぼれで生きていくのと同じ構造が、中央でも繰り返される。国際競争力がなくなっていく経団連企業は、せっせと自民党に政治献金を出していけば、厳しい国際競争で勝てなくても、国内で自民党政権は衰退する重化学工業を救済するような国家事業を展開してくれるのである。いくつかを列挙しておくだけにとどめるが、 (1)アベノミクスは政府の大規模予算と日銀の金融緩和を続ける円安インフレ政策であり、輸出大企業を中心に未曾有の利益をもたらしている。さらに円安バブルで表面上の企業決算をよくする。 (2)安倍首相(当時)は「世界で一番企業が活躍しやすい国にする」というかけ声の下で、法人税減税を行って、(本来社会保障に充てるべき)消費税増税分をかなり食ってしまった。 (3)国際的にはエネルギー価格の抑制には燃料税の一時的軽減が一般的だが、石油元売り企業や電力大手といった独占企業に直接補助金を与えて莫大な利益をもたらしている。 (4)地域独占を維持する電力大手を守るために、安全性でもコスト面でも問題が多い原発の60年を超えた運転を行う。 (5)自民党に多額の政治献金を出すJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)に参加するIT企業に4桁の暗証番号のプラスチックカードを作らせて多数の個人情報をひも付けさせ、市場だったらたちまち潰れてしまうような欠陥だらけのマイナ保険証のカードを全国民に強制している。 (6)国際競争力が低下した日本の重化学工業企業のために防衛費倍増政策でアメリカ製兵器のライセンス生産などを拡大する。 (7)国土強靱化計画の下で、学校統廃合や耐震化などで大手・中堅ゼネコンに大規模公共事業をばらまく。
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