テレビ討論会を制するのはハリスか、トランプか?
なぜマイクの「オン」と「オフ」にこだわったのか?
米有力紙ワシントン・ポストによれば、ハリス陣営はトランプが討論をしている最中も含めてマイクは常時「オン」、トランプ陣営はハリスが討論をしているときは、トランプのマイクは「オフ」を要求した。 6月27日に行われたジョー・バイデン大統領とトランプのテレビ討論会では、バイデン陣営はバイデンが発言をしているとき、トランプが介入をしないようにマイクを「オフ」にするように提案したのに対して、今回、ハリス陣営は逆の立場をとったのだ。一体、どのような狙いがハリス陣営とトランプ陣営にあったのだろうか。 ハリス陣営はハリスが討論をしているとき、トランプが発言をして妨害をすれば、有権者に対して「トランプは大統領らしくない」という印象を与えることができる。2020年米大統領選挙における副大統領候補同士のテレビ討論会において、マイク・ペンス副大統領(当時)がハリスの発言の最中に割り込むと、ハリスがペンスに顔を向けて「今、私が発言しています」と言い返す場面があった。この場面が繰り返し放送され、ペンスは副大統領らしく振る舞わなかったという印象を有権者に与えてしまった。 トランプはマイクの消音に関して、「どちらでもよい」と述べたが、トランプ陣営はトランプが90分間、政策論争に徹することができるとは考えていないだろう。必ずハリスに対する誹謗中傷が飛び出すとみているのだ。 故に、トランプを大統領らしく見せるために、ハリスが議論している間はマイクをオフにした状態にする必要がある。ハリスが意見を述べているとき、例えば「違う!違う!違う!(Wrong!Wrong! Wrong!)」というような内容を否定するトランプの言葉をマイクが拾えば、選挙の勝敗の鍵を握る無党派層や郊外に住む女性有権者は、大統領らしく振る舞うことができないトランプに対して、好印象を確実に持たないだろう。裏返せば、ハリス陣営はマイクを常時「オン」にして、ハリスの発言中の彼女に対するトランプのルールを無視する否定的な言葉を有権者に聞かせたいのだ。 結局、ハリス陣営は相手の発言中は、マイクを「オフ」にするというトランプ陣営の意向を受け入れた。トランプ陣営はコイントスでも勝って、最終弁論で有利な後攻を選んだ。 ハリス陣営が不利な条件で妥協した理由は、テレビ討論会の開催は米国民にとって有益であり、政治的な駆け引きよりも重要であると判断したからであると言われている。 ハリス陣営は、今回のテレビ討論会の形式は、トランプを守ってしまうと討論会を主催するABCニュースに書簡を送った。同陣営は、討論会の形式がトランプに有利であるという印象を有権者に与える戦略に出た。