ネットで本は買えるけれど…本屋も図書館もない町で蔦屋「出張書店」開催へ「選ぶ楽しみ忘れないで」
書店がない地域の住民が本を手に取る機会をつくろうと、高知蔦屋書店(高知市南御座)は9、10日、高知県大豊町杉の旧町立おおとよ小学校でイベント「出張高知蔦屋書店」を開催する。実際に購入できるのはもちろん、飲み物を片手に買う前の本を楽しむこともできる内容で、同書店が初めて企画した。(田中志歩)
県内には書店が一つもない「無書店自治体」が複数あり、大豊町もその一つ。町によると、町内には公民館などに入る図書室はあるが、図書館もないという。
イベントは同書店が主催し、大豊町と事業コンサル会社「モデルビレッジ」(高知市)が共催する。企画の一番の狙いは、町民や嶺北地区の人たちに「本の中に埋もれる体験」をしてもらうこと。同書店の西谷智子さん(45)は「ネットで本は買えるけれど、書店に並んだ色々なジャンルの本から『選ぶ楽しみ』を忘れてほしくない」と話す。
大豊町は廃校になった校舎の活用を進めており、今回の企画に賛同した。2022年3月末で廃校になった同校の教室や多目的室を利用し、教卓やロッカー、職員机などを陳列棚として活用する。
イベントでは同書店、TSUTAYA中万々店(高知市中万々)、倉貫書房(東京都大田区)の3書店が計約2000冊を陳列する。高知蔦屋書店に入る雑貨店やカフェなど約20店舗が出店し、同書店内と同様に、コーヒーなどを飲みながら買う前の本を試し読みすることもできる。古着を使ったトートバッグ作りや染め物体験ができるワークショップもある。
町の担当者は「地域の人には小学校に活気が戻った様子を、町外の人にはおおとよ小の雰囲気を味わいながら、本や体験を楽しんでほしい」と来場を呼びかけている。
9日は午前11時~午後5時(午前11時~正午は町民優先入場)、10日は午前10時~午後4時。入場料は200円(小学生以下無料)で、上履きが必要。駐車場は同校から徒歩10分の町農村広場(同町中村大王)を利用できる。問い合わせは高知蔦屋書店(088・882・5544)。