医師の立場からみた、生活の質を保つために必要な体の機能4つとは?自分の優先順位を決めることで、超高齢化社会の医療費に備える
◆お金がどれだけ必要か 「マイQOL」の優先順位を把握できたでしょうか。 次は、それぞれの機能を維持するために、お金がどれだけ必要かを考えてみましょう。 たとえば、「できるだけ視力を維持して本が読めることが一番大事。他の機能はあきらめて構わない」という人は、「視力矯正手術」にお金をかけることを考えるかもしれません。 自分の歯がダメになるのは我慢がならないけれども、すでに歯磨きを怠ってきて、将来は入れ歯になる可能性が極めて高いとします。「けれども入れ歯は嫌だ」と考えるなら、次なる選択肢は「インプラント」です。 インプラントにいくらかかるのかをかかりつけの歯科医に相談するか、インターネット検索をするかして、世間の相場を調べてみましょう。 「音楽を長く楽しみたいから、聴こえを維持するのが最優先」と考える人は、爆音が鳴っているところに長時間いないようにする、大音量でイヤホンを使わないというような生活習慣を維持しながら、いつか高音質の補聴器を使うことを考えてお金を準備しておいたほうがいいでしょう。 「できるだけ長く自分の足で歩けることが最優先事項」という人は、年をとって膝の痛みで歩くのが難しくなってきたら再生医療を受けるという手があります。 自身の細胞を増やして膝に注射することで歩けるようになる場合もあるのです。 脊柱管狭窄症による腰痛に悩む人は、外科手術なしで安全に痛みを解消できる腰椎カテーテル治療を選択することもできます。 このように、自分が選択したい高額医療なり最先端デバイスなりを調べて、お金がどれだけ必要かの目安を知ったうえで準備を始めてください。
◆「いざ」というときのために ちなみに私は、「いざ」というときのために一定額をすぐに引き出せる預金として準備しており、家族にもその情報を伝えてあります。 「いざ」の内容によって、その金額で十分足りることもあれば、全然足りないこともあるでしょう。 それでも、ある金額で線引きをして、「何か問題が起こったらこの範囲でQOLを下げない生活ができるようにしよう」と考えておくと、少しだけ気持ちが楽になるような気がします。 優先順位は決まったけれども、健康維持にそれほどお金を使えない人は、優先順位の高い順に日常生活でどのようなケアができるかを考えましょう。 何といっても、今の時代に生きる人は長生きをするのは避けられないのです。 目、耳、歯、膝と腰についてはできるだけ長くその機能を維持するほうがQOLは圧倒的に高くなります。 ※本稿は、『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。
奥真也