「ヤバければやめればいいじゃん」では遅い 子どもに迫る薬物の危険性訴える
身近に迫る薬物の危険性について警鐘を鳴らす、医療ジャーナリストで薬剤師の吉澤恵理さん。自身は3男1女を育てるシングルマザー。子どもたちを愛する気持ちが発端となり、首都圏の学校を訪問して覚せい剤や大麻といった薬物に関する講演を行っている。話を聞いた。
タバコやお酒と同じように好奇心 「ヤバければやめればいいじゃん」
「とくに子どもたちを教育する私たち大人世代が、一般的に薬物教育って受けていないから、薬物ってなに? っていうところがわかっていないんですよね。タバコやお酒と同じように好奇心で、『ヤバければやめればいいじゃん』っていう感覚で始めちゃう。それは違うんだよ、っていうのをどこかで伝えたいんです」 薬物は、遠い存在ではないと感じている。 「母子家庭なので人より働かなければならないから、ずっと子どもたちをみていられない。数年前、思春期の息子が遊びから帰ってきて、『○○ハーブってなに?』って聞くんですよ。遊びに行ったらそういうのを売ってる店がいっぱいあるんだよ、って。これは危険だと。ただ、それを広く伝える術がないんですよね。それで、薬物乱用防止教室の講師になったんです」
薬物と初めて遭遇する場面では、それがなんだかわからない
現在は、東京都内を中心に、埼玉など1時間で行ける範囲内にある小学校、中学校、高校で講演をしている。ボランティアなので、本業を休んで行かなければならないため、活動範囲が制約されるのが目下の悩みだという。子どもたちの反応はどうなのか。 「親御さんは、え、いま小学校から教えなくちゃいけないぐらいの状況なんですか、なんて反応もあるんですね。逆に、子どもたちのほうがニュースなどを見ていてよく知っていますよね。覚せい剤って知ってる? って聞くと、元野球選手がとか、歌手がとか、子どもたちはそういう報道に敏感というか。いまの子って大人が思っている以上にテレビだけじゃなくネットなどでそういうトピックスをよく見ていますね」 ただ、それがごく身近にあり得るということは、いまひとつ実感できていないそうだ。 「薬物と初めて遭遇する場面では、それがなんだかわからないよ、って話をするんです。子どものうちは、ちょっと影のあるワルな先輩がかっこいいとか、自分の好きな先輩に勧められたらやっちゃう、みたいなところがありますよね。みんなやってるからやろうよっていわれたときに、たとえば、口に入れるものとか、いままで見たこともないような動作、吸引しているとか、『え? なんだろう』って思うことは絶対やっちゃいけないよ、って言うんです。そうすると子どもたちも、ああそういうことがあるんだってわかる」 実際に学校で講演をしてみると、脳に対する悪影響を教えると反応が大きいという。 「いろんな説明を試みたんですけど、最近は脳がどれぐらい重要かって話から入るんですね。危険薬物は、脳の機能を壊していっちゃうんで。進むと薬物性の精神病という形でしっかりした治療をしないともうだめになる。治療をしても、フラッシュバックがついてまわる。一度やったら更生するにあたっては気を抜けなくなります」