なぜ松山英樹は歴史を塗り替えることができたのか?
ゴルフ界の歴史が大きく動いた。男子ゴルフの海外メジャー初戦、マスターズの最終日が日本時間12日未明に米ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGC(7475ヤード、パー72)で行われ、2位グループに4打差の単独首位で発進した松山英樹(29、LEXUS)が、前日からスコアをひとつ落としながらも通算10アンダーで逃げ切り、日本人男子選手として初めてメジャーの頂点に立った。 アウトの前半で3バーディー、1ボギーをマークした松山は、インの後半に入って1バーディー、4ボギーと苦しみながらも、通算9アンダーで先にホールアウトしていたウィル・ザラトリス(24、アメリカ)を1打差で抑えてフィニッシュ。マスターズ勝者に贈られる伝統のグリーンジャケットにアジア勢として初めて袖を通し、優勝賞金207万ドル(約2億2700万円)を獲得した。
「最後まで緊張していた」
18ホールにわたって貫き通したポーカーフェイスの下で、松山は想像を絶するプレッシャーとも闘っていた。アマチュア時代を含めて10度目の挑戦となった憧れのマスターズの最終日を最終組で、しかもトーナメントリーダーとして迎える。1番(パー4、445ヤード)のティーグラウンドに立った瞬間に、経験したことのない感覚が身体の内側からわきあがってきた。 「正直、1番のティーグラウンドに行くまでは全然普通かなと思ったんですけど、やっぱりティーグラウンドに立つとすごく緊張してきて。最後まで緊張しっ放しで終わりました」 苦笑いした通りに、3番ウッドで打ったティショットを右の林へ打ち込み、フェアウェイへ出すだけだった2打目をへて、自信があったはずのアプローチもピンに寄らない。長い距離のパーパットもカップに嫌われ、3日目には叩かなかったボギーでいきなりスコアを通算10アンダーに落とした。 しかし、ミスを引きずらず、嫌な流れをすぐに断ち切る精神的な切り替えの速さが、今大会で松山が見せた進化の跡となる。2打目をガードバンカーに入れながら絶妙のアプローチを成功させた2番(パー5、575ヤード)でバーディーを奪う、いわゆるバウンスバックを成功させて波に乗った。 「とにかく自分のベストを尽くすことだけを考えて、14アンダーから15アンダーにまでスコアを伸ばせば追いつけないと思っていたので、そこを目指そうと」 その後はパーをセーブし続け、8番(パー5、570ヤード)と9番(パー4、460ヤード)で連続バーディーをゲット。未曾有のプレッシャーがかかっていると認めた上で、それでも攻め抜く姿勢を自らに言い聞かせることで克服し、一時は2位グループとの差を5打差にまで広げた。 インの12番(パー3、155ヤード)でボギーを叩くも、続く13番(パー5、510ヤード)で再びバウンスバックに成功。3日目に続いて同組となったザンダー・シャウフェレ(27、アメリカ)が3連続バーディーを奪い、2位に浮上して迎えた15番(パー5、530ヤード)を勝負どころと決めた。