みんなの夢の中にニコケイが登場!?という最新作が公開に ニコラス・ケイジ【ハリウッド アノ人のホントの顔】
洋画系映画ライターの第一人者であり、ハリウッドスターや監督への取材経験が豊富な渡辺麻紀さん。そんな渡辺さんが、取材中やその裏側で“見た”“聞いた”さまざまなエピソードはまさにお宝の山。毎回ひとりターゲットを決めながら、その人物が最新作について語ったことから、過去の言動や知られざる素顔まで、アレコレ聞き出します。(ぴあアプリ「海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔」より転載) ボディガードのような実の息子キャル=エルとバカンス中の写真、『ハネムーン・イン・ベガス』でプレスリーコスプレする写真など(全6枚)
最新作は、自称“キャリアの中で五指に入る名脚本”
――今回はニコラス・ケイジです。彼が主演したブラックコメディ『ドリーム・シナリオ』が公開されました。これはどんな映画なんですか? 渡辺 ニコケイ演じる地味めな大学教授がなぜかみんなの夢の中に現われ、あっという間に時の人となる。最初はただ夢の中を通り過ぎるだけの登場だったのに、あるときから邪悪な存在になり、今度はみんなに忌み嫌われるようになる……という今どきの社会を映し出したような作品です。確かにジャンルとしてはブラックコメディなんでしょうが、むしろ私はホラーっぽかった。監督&脚本はノルウェー出身のクリストファー・ボルグリです。 ニコケイは脚本をとても気に入って出演したようです。何でも自分のキャリアの中で五指に入る名シナリオ、と言っていて、確かにアイデアは面白い。 ――残りの4作はどんな作品? 渡辺 コーエン兄弟の『赤ちゃん泥棒』(87)、自身がアカデミー主演男優賞を獲得したマイク・フィギスの『リービング・ラスベガス』(95)、チャーリー・カウフマンが脚本を書いたスパイク・ジョーンズの『アダプテーション』(02)、そして吸血鬼ホラー、『バンパイア・キッス』(89)を挙げていたそうです。 『リービング・ラスベガス』を除くとブラックコメディなので、そういう作品が好みということなんだと思います。ニコケイはおたくなので何となく納得です。 ――ケイジはやっと借金を返済したと聞きました。 渡辺 そういうニュース、流れていましたよね。ビジネスマネージャーのよくないアドバイスが財政難を招いたとニコケイ自身は言っているようです。彼には浪費癖があるんですが、それをセーブさせなかったということもあるのかもしれない。借金は報道によるとおよそ8億円。自己破産という方法もあったようですが、彼はちゃんと返済する方を選び、山のように映画に出演して完済した。 彼にとって8億円って、それほど凄い数字じゃないと思ってしまうのは、人気絶頂のときのギャラが2000万ドル(およそ30憶円)だったからです。『60セカンズ』(00)、『ウインドトーカーズ』(02)、『ナショナル・トレジャー』(04)などです。 で、それを湯水のように使いまくった上に借金までして、2013年から2024年まで、40本以上のB級映画に出演してどうにか返済した。それらの作品のギャラはちょっと分からないんですが、1億円に満たないのかもしれない。 ――ケイジの取材は? 渡辺 結構してますね。最初はリドリー・スコットの『マッチスティック・メン』(03)、その後『ナショナル・トレジャー』でやったようなやらなかったような、覚えてない(笑)。『ゴーストライダー』(07)や『魔法使いの弟子』(10)などでもやりました。 ニコケイは紛れもないオタクです(笑)。『ザ・ロック』(96)のとき、確かエルビス・プレスリーのレコード等を集めている博士を演じていたし、『ハネムーン・イン・ベガス』(92)ではプレスリーのコスプレ大会に出ていた。プレスリーの大ファンだったわけで、それが嵩じて彼の娘リサ・マリー・プレスリーと結婚したんですよ。 ――それは徹底してますね。 渡辺 それに、彼はとてもアメコミが大好きで、ケイジという名前もアメコミ『パワーマン』の主人公ルーク・ケイジからいただいているのは有名ですよね。で、大好きだというアメコミヒーローを演じた『ゴーストライダー』のときは、ボツになった企画、ティム・バートンの『スーパーマン』についてこう語っていました。 「僕には『スーパーマン』を契約していたにもかかわらずダメになった過去がある。そうだ、ここではっきり言っておきたいことがあるんだ。当時、企画がキャンセルになったにもかかわらず、ギャラを全額取ったと報道されたけれど、それはウソだ。ものすごくディスカウントした額をもらっただけで、全額だなんてあり得ないよ。そのディスカウントのギャラは準備に時間をかけたことに対する報酬だから正当だと僕は思っている。 で、ワーナーが作った最新の『スーパーマン』(『スーパーマン リターンズ』(06))を観たとき、そうか、スタジオが望んでいたのは伝統的でノスタルジックな作品だったんだと理解したんだよ。僕とティム(・バートン)のバージョンはそれとは真逆だったから」 ちなみにその映像は『ザ・フラッシュ』(23)で観ることができるんですが、続けてこう言っています。 「もちろん、当時は大きなショックだったけど、今はそれでよかったのかもしれない。なぜってこの『ゴーストライダー』の方が僕にとってはよりパーソナルな作品だから。いや、本当にこの役を演じられて嬉しいんだ。『ゴーストライダー』はコミックブックの熱狂的なファンじゃないと知らないだろうから、実写映画化されること自体、めちゃくちゃ嬉しい」