せっかく分解したのなら、磨いて、美しく仕上げたいのが「エンジン」
電動ドリル+不織布ホイールバーという手段もある
ミニディスクグラインダーのカップに不織布シートをセットして磨いた今回だが、ミニディスクが手元に無いときに便利なのが「電動ドリルと不織布ホイール」の組み合わせだ。径サイズの違いと粒度の違いがあれば、臨機応変に磨きこむことができる。いずれにしても先行でドロ汚れと油グリス汚れを落としてから作業進行しよう。
ヘアライン仕上げは「同一方向に擦る」のが基本中の基本
その気になってピカピカに磨いてしまうと、なんだか他の部品と比べて浮いてしまうことがある。そんな場合は、不織布シートを用意して「一方通行=同じ流れ方向のみに磨く」ことでヘアライン風味に仕上げることができる。磨き目が同一方向で統一されていると、組み立て完成後の美しさが際立つようになる。これは魅せるテクニックだ。 ────────── POINT ●ポイント1 「せっかく分解した」のなら、一歩先の領域へ踏み込み、仕上がりアップを追求してみよう ●ポイント2 クランクケースは手持ちの電動工具などで想像以上に美しく仕上げることができる ●ポイント3 磨き過ぎで周囲が写り込むようなときには、全体的なバランスも考えヘアライン調にするのもお勧め ────────── レストア要素が強いエンジンオーバーホールの際には、クランクケースやシリンダー、シリンダーヘッドなどをサンドブラストする例が多く、その仕上げには、光沢ガラスビーズを利用する機会が多い。下地処理として利用されるアルミナ仕上げのままでは、艶がまったく無く、逆に腐食しやすく汚れが目立ってしまうため、ガラスビーズで仕上げることで、特有の輝きを得られるのと同時に、一定期間は腐食の発生を防ぐ効果も得ることができる。 以上のことから、アルミ地肌のエンジンでは、ガラスビーズ仕上げをチョイスする例が圧倒的に多いのだ。サンドブラストを施した際には、処理後のパーツを徹底的に洗浄しなくてはいけない。どんなに細かくマスキングを施したつもりでも、入り込んでしまうのがサンドブラストメディアなのだ。したがって、ブラスト処理後には、すべてのネジ山やオイル通路内部を徹底的に洗浄し、繰り返しエアブローを施すのは当然で、できることなら超音波洗浄機も利用したいものだ。 ここでは「クランクケース磨き」を実践しよう。磨きと言っても、バフ仕上げのような徹底的なポリッシュ=鏡面仕上げではなく、不織布シートや不織布バーを使って汚れ落としと同時に、簡単なケース磨きを行なう実践実例である。オーバーホール時には、各パーツを洗浄点検してから組み立て作業に入るが、コンプリートエンジンでは磨き難いクランクケースなどは、分解したタイミングに簡単な磨きを施すだけで、組み立て後のエンジンは、相当キレイに見えるようになるのだ。 ホンダ横型エンジンのクランクケースを例に作業実践したが、不織布シートを使ってミニディスクローターで磨いた時間は僅か数分。仕上げ磨きを含めても、ものの十数分でこの程度の輝きを得ることができる。もちろん、作業前には道具を準備する必要があるが、ある程度の道具や磨き用の不織布シートがあれば、想像以上にキレイなクランクケースに仕上げることができる。エンジンの分解組み立て実施時には、クランクケースの簡単な磨き作業もお試しください。もちろん、作業後のパーツ洗浄もお忘れなく。
たぐちかつみ