昨季2冠の青森山田がもがいている。プレミアで早くも4敗目。“憎らしいほどの強さ”を取り戻せるのか
「ちょっとしたきっかけで変わりそうな状況ではある」(正木監督)
今季、昨季からトップチームでポジションを掴んでいるのは右SB小沼蒼珠(3年)だけ。それ以外は総入れ替えとなり、文字通り一からのスタートで、不安視されていた部分もあった。 1月下旬の東北新人戦では準決勝で尚志に敗北。そこから修正を図り、シーズン開幕直後はリーグ戦を2勝1分で乗り切ったものの、そこから3連敗。強固な守備と勝負強さは影を潜め、脆さが顔をのぞかせた。直近3試合はディフェンス陣が奮起して1失点に留め、1勝2分で乗り切ったが、この川崎戦で今季4敗目を喫して、順位も12チーム中で暫定9位となっている。 「無失点の時間帯をどれだけ長く作れるかがうちのサッカー。今年は決して上手い選手が多いわけではないので、今できる100%、120%は、川崎戦の最後に見せた。相手よりも早く動き出し、予測の部分で上回ること。そして、ゴール前で迫力を持って押し込む形。これがどんどん出てこないといけない」(正木監督) 昨季のような強さはまだなく、浮き沈みが激しい今季の戦い。小沼もチームの現状について聞かれると、厳しい表情を見せた。 「こういう負け方をしてしまったのは、自分たちの力不足。エンジンがかかるのが遅いし、前半にあったチャンスを決め切れなかった」 しかし、浮上の兆しがないわけではない。川崎戦の最終盤に見せた攻撃の迫力は“さすが”の一言で、敵将・長橋康弘監督も思わず唸った。 「山田さんはかなり映像を見たけど、外に蹴らせるようなプレスをしてくるし、セカンドボールを拾うための陣形を作るのが上手。選手たちも外に蹴り出すような状況を作るほかになかった」 ロングスローも含めた得意のセットプレーは健在で、サイドアタックもハマった時の威力は凄まじい。そのスタイルを立ち上がりから貫ければ、相手を一気に飲み込んでいける。そして、守備陣が“ゼロ”で凌げなくとも、最小失点で切り抜ければ光は見えてくるはずだ。 「ちょっとしたきっかけで変わりそうな状況ではある」と正木監督が話した通り、攻守の歯車が噛み合えば、一気に浮上することも不可能ではない。インターハイまでに残されたリーグ戦は、7月7日のU-18高円宮杯プレミアリーグ・第11節の柏レイソルU-18戦のみ。もがいて苦しんだ分だけ強くなる――。憎らしいほどの強さを取り戻すべく、絶対王者は前進を続けていく。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)