【世界の野球ネパール編2】空き地で木の棒を振る子どもに野球の原点を見る
空き地で見た不思議な遊び
この日、空き地で不思議な遊びをする子どもたちにも出会った。打ったり、投げたり、捕球したりし、攻守交代もしており、野球に似た遊びをしていた。話を聞くと、そのスポーツの名は、「ダンディビオ」と言うそうだ。 ダンディビオはクリケットの原型とされ、ネパールの村に住む子どもたちの間ではとても有名なスポーツだという。サイズが違う2つの小さな木の棒を巧みに操り、野球のように打って、走って、守るスポーツだ。現代のスポーツのように「用具」を必要とせず、自分たちで採ってきて加工した木の棒を使い、地面を少し掘るだけで楽しめるゲームだった。 結果をめぐって仲間と喧嘩を繰り返しながらも、夢中になって、木の棒を追いかける彼らの姿をたくましく感じた。こういった遊びを通して協調性を身につけ、自分と向き合い成長し、次は隣の村の子たちとでも対戦しているのだろうと、私は勝手に想像を膨らませていた。
軍隊の野球チームを訪問
最終日、私たちは普段は立ち入ることのできない軍隊の野球チームを訪問する機会をいただいた。その日は12人の選手が練習しており、選手の投げ方や正確な送球をみて、すぐにクリケット選手だとわかった。決して野球をする上で恵まれた環境ではないが、アイデアを駆使し、初めてみる日本人コーチ陣に敬意を払い、野球に取り組む姿勢に私は心打たれた。 この日、ショートを守っていた24歳の軍人青年は「もっと野球がしたい!野球を知りたい!」と話してくれた。彼の思いに今すぐ応えられない自分に歯がゆさを感じたが、彼らがネパール野球を牽引するであろう次回の西アジアカップを考えるとワクワクした。
かつては野球不毛の地と言われた西アジア地域でも、着実に各国が力をつけ、前進していることを身をもって感じた。発展途上国における野球の位置付けは低く、各国の情勢などによって、作り上げてきた野球環境が大きく変わることもある。それでも、国境・勝敗を超え、野球を通してできる新たなコミュニティーが、現地の人々の生活をより豊かなものにしてくれると私は信じている。こういった活動を続ける上で葛藤する時もあるが、5年後、10年後へ、私がいたことで生まれる何らかの価値を、その国に残すことができているかを考えて活動していきたい。