【特集】“殺傷能力のある武器”の輸出がついに解禁 5年で43兆円の予算に、新規参入企業も続々 技術力・防衛力の発展に繋がるのか?それとも…過熱する「日本の防衛産業」の今を追う
(「三菱電機」電子通信システム製作所・桜井英一工作部長) 「これは、電波を出すホーンという部品です。単純なラッパに見えますけど、この形状の精度が(要求が)非常に厳しくて、数ミクロンということで、1ミリの1000分の1単位の精度が要求されます。髪の毛の太さの100分の1オーダーです」
こうした加工技術が、レーダーの電波を正確に出すために欠かせないのだといいます。高い技術が認められ、2023年10月にはフィリピン軍向けに警戒管制レーダーを輸出し、契約金額は4基で約1億ドル、日本円にして140億円以上。現在のルールの下では、日本初となる完成装備品の輸出となりました。
(「三菱電機」電子通信システム製作所・増田直人所長) 「メーカーとしては、多くの製品を供給させていただくことができるのであれば、第三国への移転も可能なほうが、ありがたい。政府の方針に従って、海外展開、海外移転(輸出)を積極的にやっていきたいと思っています」
“殺傷能力のある武器の輸出”解禁 賛否両論も、政府が回避したい「防衛装備の“ガラパゴス化”」
日本の防衛産業は2023年12月22日、大きな節目を迎えました。日本でライセンス生産した迎撃ミサイル「パトリオット」を、アメリカへ輸出することを決めたのです。戦後、長きにわたり制限してきた“殺傷能力のある武器の輸出”が解禁。政府としては、海外へ輸出を認めることで、自衛隊以外の市場を開拓し、防衛産業の衰退を防ぐ狙いもあります。
さらに政府は、日本・イギリス・イタリアで初めて共同開発し、2035年までの配備をめざす次期戦闘機について、第三国への輸出も検討しています。与党内での議論を取りまとめる小野寺元防衛大臣は、海外輸出の意義を強調しました。
(元防衛相・小野寺五典議員) 「今回の第三国移転の議論は、日本の所望というよりも、一緒にやっているパートナーの国から要請を受けています。こういう枠組みに応えないと、『日本は共同開発を本当にできる国か?』と、今後いろんな新しい装備を開発する枠組みのなかで、日本は敬遠されてしまうかもしれない。日本の防衛装備がガラパゴス化してしまいますし、結果として、自分たちが使う装備をむしろ輸入してこないといけない。私は、日本としてはあってはならない方向だと思います」
ただ、他の国を攻撃できる戦闘機の輸出には与党内からも慎重論が出ていて、公明党は「国民の理解が十分に得られていない」と難色を示しています。 (公明党・石井啓一幹事長) 「第三国に輸出するということは、これまでのあり方を大きくはみだすあり方ですから、慎重であるべきだという考え方であります」 賛否両論が巻き起こる中、日本の防衛産業の熱は確実に高まっています。 (「かんさい情報ネットten.」2023年12月26日放送)
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