【社説】光復節を分裂させ、国民の批判に宣戦布告した尹大統領
第79回光復節記念式が結局は分裂開催となった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領や与党の指導部などは、15日にソウルの世宗文化会館で行われた政府式典に出席した。一方、光復会などの大半の独立運動団体と野党6党は、キム・ヒョンソク独立記念館長の任命などの歴史歪曲に抗議し、ソウルの白凡金九(ペクポム・キム・グ)記念館で独自に記念式をおこなった。 これまでは政権が保守か進歩かに関わらず、光復節だけは全国民が声を一つにして独立運動精神をたたえる統合の場として位置づけられてきた。しかし尹政権発足後、陸軍士官学校からの独立英雄の胸像撤去、強制動員などの日帝の責任の否定、ニューライト系の人物による歴史関連機関の掌握など、反憲法的な歴史歪曲の試みが相次いだ結果、政府樹立後初めて政府と民間が別々に記念式典を開催するに至った。 厳密に言えば、二つに割れたとも言い難い。独立運動の歴史と意味をおとしめる尹大統領の日本にすり寄る行為に対抗して、国民の大多数の思いを代弁した独立運動団体が独自の記念式を開いたものだからだ。政府式典は、たたえるべき韓国の歴史の本質が抜け落ちた格好だけの行事にとどまった一方、真の光復節の意味は62の独立運動団体が開催した素朴な記念式で具現化された。光復会のイ・ジョンチャン会長は、「最近、真実に対する歪曲と親日史観(日本統治時代に日本帝国に加担・協力した反民族行為を肯定する見方)に染まった低劣な歴史認識が幅を利かせ、韓国社会を混乱に陥れている」として、「この歴史的退行と破壊をただ眺めているわけにはいかなかった」と、自主記念式開催の理由を述べた。共感する国民は非常に多いはずだ。 歴史的正統性を喪失した分裂式典において、尹大統領は空虚で偏向した「8・15統一ドクトリン」を発表した。「分断体制が続く限り、我々の光復は未完成にならざるを得ない」との発言は、大韓民国の大統領が持つべき当然の認識だ。しかし、分断克服の実効的な方法論の欠けた上辺だけのレトリックにとどまっている。尹大統領は「北の地に我々が享受する自由が拡張されなければならない」と吸収統一の意思をあらわにしたうえ、「北朝鮮の住民が多様な外部情報に接することができるように」北朝鮮に対するビラ散布と拡声器の稼動を継続するとの考えを表明した。吸収統一という理念的な標柱ばかりを強調し、国民の生存と直結する平和の価値を軽く考える態度だと言わざるを得ない。 さらに大きな問題は、このような独断的な主張に批判的な考えを持つ国民のことを、一掃すべき「反自由勢力、反統一勢力」と非難したことだ。尹大統領は「虚偽扇動とエセ論理は自由社会をかく乱する凶器」だとし、「エセ知識人」と「黒い扇動勢力」に「韓国国民は立ち向かって戦わなければならない」と述べた。昨年の光復節の祝辞では、野党と批判勢力のことを「世論を歪曲し、社会をかく乱する反国家勢力」と述べたかと思えば、今度は「反統一勢力」というレッテルまで貼った。またもイデオロギーで国民を引き裂いたのだ。しかし、吸収統一ではなく平和的統一を主張したら反統一勢力だというのは、愚にもつかないこじつけにすぎない。一方、歴代の大統領の祝辞では必ず言及されていた日本の歴史的責任は、まったく触れられなかった。尹大統領がこのように統合の道を提示するどころか、分裂ばかりをあおる限り、国家指導者の資格に対する国民の疑問も強まるばかりだ。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )