「カタツムリ」の9割が右巻きの謎…天敵ヘビの影響で左巻きに進化も ヒトの臓器反転のヒントに?
「でんでんむしむし」と童謡に歌われるほど、日本人にとって身近なカタツムリ。幼少期にはつかまえて観察したという方もいるだろう。しかし、そのカタツムリが「どっち巻き」だったかまで覚えているだろうか。 実は、カタツムリの大多数は「右巻き」で、「左巻き」は1割程度しか存在していない。右巻きが多い理由はまだ明らかになっていないが、その巻き方向の研究が人間の内臓位置が逆になる「内臓逆位」の解明に役立つかもしれないという(近年、お笑い芸人のチャンス大城さんが自身の内臓逆位を明かして話題になった)。 そもそもカタツムリとはどんな生きものなのか。謎が多いカタツムリの「巻き」について、どんな研究がなされているのか。 科学にとても詳しい「理科子先生」が、素朴なギモンにやさしく答えてくれる電子書籍『おしえて! 理科子先生(1)』(読売新聞アーカイブ選書)をもとに、その実態をみていこう。 ※以下は同書の「(3)左巻きカタツムリ 珍しい?」より引用しました。 *** Q:雨上がりの林に、殻が左巻きのカタツムリがいました。理科子先生、左巻きのカタツムリって、珍しいのですか。(2021年6月3日掲載)
9割が右巻き
貝の中でも陸にすむものをまとめてカタツムリと呼んでいるわ。殻が平たいものだけでなく、細長いものもいて、日本には約800種類、世界には数万種類もいるそうよ。 殻が時計回りに巻いているのが右巻きで、逆回りが左巻き。東北大の千葉聡教授によると、9割が右巻きだそうよ。 「関東には大きな左巻きのヒダリマキマイマイがいるので、見たことがある人もいると思います。関西の左巻きで目立つのは、殻が細長いキセルガイです」(千葉さん) 右巻きか左巻きかは種によってほぼ決まっているけど、ヒダリマキマイマイの中には右巻きのものもいて、まさに今、種が分かれようとしている段階にあると考えられているの。
天敵に関係?
カタツムリの進化を考えようと、たくさんの科学者が研究してきたけど、なぜ右巻きが多いのかはよくわかっていないわ。海の巻き貝は99%が右巻きだというから、それも不思議よね。 沖縄の石垣島や西表島には、左巻きカタツムリの集団がいる。早稲田大の細将貴准教授の研究によって、これらの島々に左巻きが現れたのは、天敵のイワサキセダカヘビが、右巻きを食べるように特殊化しているためとわかったの。 このヘビは、あごの右側の歯の数が多く、カタツムリを食べるときに頭を左に傾ける習性がある。右巻きはうまく食べられるけど、左巻きの捕獲にはよく失敗するそうよ。「台湾や東南アジアで左巻きの種が多様化しているのも、右巻きを食べるヘビと関係がある」と、細さんはみているわ。