【政府の経済対策】「賢い支出」考えたい(11月23日)
政府は、物価高への対応などを柱にした経済対策を閣議決定した。昨年度を7千億円ほど上回る13兆9千億円程度が関連経費として一般会計補正予算案に計上され、財政膨張路線の手じまいには至らない見通しとなった。政策効果の高い歳出を希求する経済用語「ワイズ・スペンディング(賢い支出)」の精神に国民一人一人が立ち戻り、国家予算の在り方を再考する時期を迎えている。 石破茂首相は衆院選期間中から、昨年度の13兆1992億円を上回る補正予算の編成を目指すとしてきた。少数与党として来年夏の参院選を見据えれば、政権は国民の家計支援に一層重きを置いた政策運営に傾くとの見方も少なくない。新型コロナ禍でふくれ上がった財政状況に危機感を抱き、健全化に取り組む必要がある。 経済対策には、103万円の「年収の壁」引き上げが明記された。税制改正に向けた議論では、地方財政への影響を考慮した制度設計が不可欠だ。手取りの増加分を貯蓄に回さず、消費に向ける流れをいかに生み出すかといった視点も求められよう。
電気・都市ガス代の補助再開やガソリン料金の支援を巡る項目も盛り込まれた。物価高と止まらぬ値上げが生活を圧迫する厳しい現状は十分に理解できる。ただ、段階的に縮小するとはいえ、ガソリン料金の抑制策は化石燃料への依存を長引かせ、省エネの技術開発の足かせになるという指摘も忘れてはならない。 地方の立場からすれば、石破首相の「一丁目一番地」である地方創生への手厚い後押しも望みたい。インバウンド(訪日客)が観光振興の起爆剤となっているが、受け入れ体制の充実に向けた費用を補助するとした。将来的な誘客の呼び水となる制度構築と財政的な支援に向けたさらなる検討があってもいい。 与党内をはじめ、衆院選で他党が掲げた公約にも十分に目を配るべきだ。例えば、先の自民党総裁選の立候補者は福島市の演説会で、「各地に日本経済を駆動するエンジンをたくさんつくる」と表明した。地域ごとの特色ある産業集積は経済安全保障の機能を高め、地方活性化に資する可能性を秘めている。成長戦略こそ、未来への最も賢い支出だろう。(菅野龍太)