ドラフト超隠し球の地方無名大学152キロ右腕が神宮の全国区でベールを脱ぐ
全日本大学野球選手権が5日から神宮球場、東京ドームで開幕するが、今秋のドラフト上位候補として急浮上してきた無名の地方大学の152キロ右腕が全国区デビューする。5年ぶり7回目の出場となった岡山商科大の近藤弘樹投手(4年)だ。初戦の相手は、関西の強豪、近大。ソフトバンク、ヤクルトが密かにマークしてきた“超隠し球”だったが、近大戦の結果次第では、中国地方の無名大学右腕が一躍、全国区でスポットライトを浴びることになりそうだ。
岡山に152キロの豪腕ありー。2、3年前からスカウトの間で噂になっていた岡山商科大の最速152キロの近藤が、いよいよ全日本大学野球選手権の舞台でべールを脱ぐ。しかも、5日の1回戦の相手が関西学生野球の強豪、近大である。中国6大学リーグは、環太平洋大学から中日の又吉克樹(27)らを出しているが、リーグ全体のレベルは決して高いとは言えず、“プロ輩出大”である近大を相手に近藤がどんなピッチングを見せるかが、各球団のスカウトだけでなくアマ野球マニアにとっても注目の一戦とされている。 しかし、周囲の喧騒をよそに当の近藤は至って冷静である。 「いつも通りに投げたいです。よそ行きの野球をしてもボロが出ます。ありのままでいいんじゃないかなと。持てる力の100パーセントを出すつもりで80パーセントを出せればいい。淡々と投げます。甲子園に出られなかった僕にとって神宮は夢の場所ではあるけれど、来ただけじゃ意味がないんです。まず1勝。上を見たら足元を救われます。一戦、一戦、勝っていくだけなんです」 1日に東京入りして、この日は法政大とのオープン戦で3イニングを投げて最終調整した。 近大の打者の映像も見たが、「そこまでレベルは離れているとは思いませんでした。昨年、ジャパンの合宿でトップレベルのバッターと対戦しましたが、恐れるほどでもないという印象を受けました。同じ人間。同じ年齢。普通にやればいいかなと。それに僕は、弱いチームで強いチームを倒すのが好きなんです。勝って当たり前のチームで投げても面白くないと思うんです」と言う。 高校は、広島の進学校の安佐北高。2年の秋にベスト8に進出し、3年の夏は1回戦、2回戦と連続完投勝利したが、3回戦の呉商業戦では5失点して敗戦、甲子園の土を踏むことはできなかった。 将来は、体育の教師か、理学療法士、トレーナーの道へ進もうと考えて、筑波大と大体大を受験したが不合格。強豪大学からの誘いもあったが正式なセレクションは受けなかった。両親は浪人を薦めたが、近藤は浪人すれば、野球ができないと考えた。「野球をどこかで続けたい」と悩んでいる頃に、野球部の監督のつながりで「岡商に拾ってもらいました」という。 中国6大学リーグのことも、岡商のことも知らずに「ノンビリと野球を楽しめればいいかな」と考えていたが、元阪神の内野手で、引退後、チーフスコアラー、北京五輪の日本代表チームでもスコアラーを務めた三宅博・特別コーチと出会い、ひとつ上の野球を見つめることができるようになった。 最速142キロしか出なかったストレートが見る見る速くなり、2年秋には、肩の不調もあってスランプに陥り伸び悩んだが、3年になって、再び急成長。今春は、さらに飛躍して10試合72回3分の1を投げて84奪三振で、防御率は1.12。7勝1敗の結果を残してチームを全日本大学選手権へと導き、5月9日の徳山戦では、7回参考記録ながら完全試合をマークした。