ドラフト超隠し球の地方無名大学152キロ右腕が神宮の全国区でベールを脱ぐ
三宅博コーチの近藤評は、「今春に大きく伸びた。遠投を取り入れた成果からか、球筋が明らかに違ってきたし、球数を使わずに勝負できるようになった。気持ちも強くなった。ボールの球質、スタイル的にはマー君と重なる。まだまだノビシロがあるピッチャー」というもの。 近藤自身も「急成長というほどは変わらないんですが、ストレートで空振りが取れるようになった」と、進化を感じ取っている。冬場に2種類のタイヤを引っ張って下半身を徹底的に鍛えた成果だという。 投球フォームは「ストレートでグイグイ押していくスタイルが大好きで小さい頃からテレビで見て真似ていた」という元広島の黒田博樹氏にそっくりで上半身でリードする力投派。ストレートの最速は152キロでゲームの後半でも140キロ後半を出せるようになった。しかも、ボールに独特の角度がある。 変化球は、カーブ、スライダー、スプリット、チェンジアップの4つで、大学で覚えたチェンジアップは「打ち取りたいときに使う」というボール。 そして近藤のもうひとつの強みはギアチェンジ可能な投球術だ。 「本当は楽なほうがいいんで(笑)三振へのこだわりはありません。何キロ出したいというようなスピードへのこだわりもないんです。いくら速くても勝てなければ、単なるボールの速いピッチャーです。研究されて真っ直ぐが狙われているなら、その球を減らせばいいんです。でも、ランナーを二塁に背負えば三振を狙います。ピンチになれば、そこでギアを変えるんです。力を入れるんです」 近藤は、140台前半から150台までストレートに緩急をつける技術を持つ。非常にクレバーだし、ギアチェンジでバランスを崩す投手が多いが、近藤の場合、そこを調整する器用さがある。 「ピッチングの理想は、かわすんじゃなく、真っ直ぐで勝負したい。でも、完全試合やノーヒットノーランをする必要はない。結果として勝てばいいんです。下級生の頃は、自分をエースと思いたくなかった。エースは勝たないといけない。勝てない奴はエースじゃないんです」 独特の美学を持つ。 では、勝つピッチングとは何か? そう尋ねると、近藤は、ふと口元を緩めた。 「答えはまだありません。まだ、そこまで勝てるピッチャーでもないんです。たまたま勝っている試合も、先に点を取られて助けてもらった試合もあった。確かに我慢はしたけれど見つけたものはないんです」 神宮で見るかるかな?と返すと「そうですかねえ。勝っていければどこがで何かに気づくかもしれません」と、答えて目力が強くなった。 血液型はB。「マイペースなんです」と自己分析する。決して雄弁なタイプではないが、ぶれない芯の強さが、話せば話すほど伝わってきた。意外とプロ向きの性格かもしれない。 春季リーグ戦では投げる度にネット裏のスカウトの数が増えてきたのは嫌でも目に入った。 「今戦うのはプロじゃありません。戦うべき相手は大学生なので、スカウトと戦っても意味がありません」 座右の銘は「経験は財産となり、夢は動力となる」。小学校の高学年で所属していたソフトボールチームの監督から卒団記念に贈られたという言葉。初めての全国舞台の登板は、近藤にとって大きな財産となり、プロという次なる夢は、彼の可能性を広げるだろう。 最後に。目の前に座られると、そのスケール感に圧倒されるが、正式な身長は、一部で報じられている191センチではなく、186センチで体重は95キロだそうである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)