財務省改ざん問題「佐川氏喚問」後も残る謎 坂東太郎のよく分かる時事用語
◎何のために?
証人喚問で佐川氏は、これまで説明したように、基本的には「刑事訴追を受ける恐れがある」との理由で証言を拒みました。ただ安倍首相が2017年2月の衆院予算委員会で「私や妻が関与していれば首相も国会議員もやめる」とした答弁が影響を及ぼしたのではないかという質問には、「首相答弁の前と後で答弁を変えたという意識はない」と否定しました。 改ざんが発覚した後、麻生財務相は佐川氏の昨年の国会答弁と「合わせるため」書き換えたのではないかという見解を示しています。「廃棄した」や「価格についてこちらから提示したこともないし、先方からいくらで買いたいといった希望があったこともない」といった内容です。改ざんされる前の原本には「要請を受けて、価格等について協議した結果、学園が買い受けることで合意した」とか「理財局長の承認を得ている」というように、それまでの発言とは異なる内容と読める記載があり、削除されていました。この矛盾にも喚問で「答弁を控える」と答えません。
◎どのように?
どういった指示体系でいかなる手口で改ざんしたかについても証言拒否。しかし改ざんされたのは事実だから、こうなってみると何のために手を染めたのかサッパリ分かりません。 「決裁文書を改ざんする」という日本語がそもそも成り立ちません。あり得ないことなのです。佐川氏が単独で改ざんした説に与せず、官邸や政治家などからの圧力もまったくなかったと考えるとすれば(佐川氏証言を信じれば)、理財局にとって不都合な記載があったから……ぐらいしか思いつかないのです。 でも削除された昭恵夫人の登場部分や、「特例的」「特殊性」という表現が不都合なはずがありません。証言通りなら前述通り、昭恵夫人の関与はなかったのだし、「特例的」の文言も通常の意思決定システムを誰かに曲げられたという意味ではなく、土地の貸付契約の期間を指すというのだから。 要するに、改ざんするメリットが何もないのに、公文書偽造の罪に問われかねない書き換えを約300か所も行ったというのです。しかも財務官僚は社会的に頭脳明晰とされる人材で、佐川氏はその中でも組織ナンバー2の国税庁長官にまで上り詰めた切れ者中の切れ者。そうした集団が何の得もしないばかりか、犯罪者になりかねない愚行を自主的に行う理由がどこにあるのか。誰でも抱く疑問のはずです。