博多祇園山笠で唯一「走る飾り山笠」今年は高さ13m…「あっと言わせちゃろうやないか」息づく情熱
豪華絢爛な人形で飾り付けられる博多祇園山笠の飾り山笠。福岡市内13か所で展示されるが、八番山笠・上川端通は、唯一「走る飾り山笠」として知られる。「昔の高い山笠ば(を)舁いて(担いで)みたい」。きっかけは1964年、上川端商店街(福岡市博多区)の副理事長だった半田新一さん(2001年死去)の一言だった。 【写真】博多祇園山笠が開幕し、お目見えした飾り山笠(1日午前、福岡市博多区のキャナルシティ博多で)=貞末ヒトミ撮影
博多祇園山笠振興会や上川端通によると、勇壮に走る舁き山笠は、電線や標識にひっかからないように高さ4・5メートルを上限としている。ただ、明治期の電線架設以前は10メートルを超える山笠も珍しくなかったという。
半田さんは「(博多祇園山笠には)全国から観客が来よろうが(来ている)。みんなで『あっ』と言わせちゃろうやないか」と仲間に呼びかけた。商店街の宣伝も狙ってのことだった。
仲間内で「お祭り男」として知られる半田さんの提案に、当時若手を取りまとめていた原公志さん(84)(商店街振興組合顧問)らも賛同。内部の部品を調節して伸縮できる飾り山笠を制作した。本番は、7月12日の「追い山笠ならし」。櫛田神社に奉納する「櫛田入り」をする日とした。
当時のアーケードは今より低く、天井に届かないように飾り山笠の高さは約7メートルとした。それでもできるだけ接触を防ごうと、原さんらは博多の街を歩いてコースを検討。竹ざおで高さを測り、「ここだったら通れる」「ここで山笠を伸縮させよう」と確認し合った。
迎えた当日、商店街にある飾り山笠に舁き手が集まった。原さんによると、「舁き山笠の場合、舁き手の力が加われば弾んでリズムが伝わるが、飾り山笠は重くて弾まない。リズムが取りにくかった」という。
走る飾り山笠が沿道に現れると、観客からは「頑張れ」「オイサッ、オイサッ」の大歓声。櫛田入りを終えても、拍手が途切れなかったという。原さんは「観衆が興奮し、どんどん山笠に水をかけた。人形が水を吸って、とにかく重たくてね」と懐かしがった。