博多祇園山笠で唯一「走る飾り山笠」今年は高さ13m…「あっと言わせちゃろうやないか」息づく情熱
半田さんの甥で、上川端通の実務を取り仕切る取締を務める公一さん(57)は、当時の思い出をうれしそうに話す半田さんをよく覚えている。公一さんは「祭り好きのおじちゃんがやり遂げたことを引き継いだ。できる限り続けたい」と力を込める。
アーケードが高くなったこともあり、上川端通の飾り山笠は現在、高さ約13メートル、重さ約2トンを誇る。今年の見送り(裏)の題材は、45周年となるアニメ「機動戦士ガンダム」がテーマだ。追い山笠ならしだけでなく、フィナーレとなる15日の「追い山笠」でも櫛田入りを披露する。
沿道では地域の人たちが、邪魔にならないように通路の物を片付け、はみ出した木の枝を切ってくれる。原さんは「年々、協力の動きが出てきた。地域の人との団結力を感じた」と笑顔を見せた。
原さんは約10年前に一線を退いたが、今も安全を願い、当番法被を着て、山笠台に舁き棒を固定する「棒締め」や飾り山笠の飾り付けを見守る。6月29日午後も、人形師や山大工が作業する様子を見ながら、「伝統を守るために応援しに来よる」と後輩たちにエールを送った。
上川端通の責任者である総務の長崎正洋さん(60)は、この商店街で生まれ育った。長崎さんにとって飾り山笠は当たり前の存在だが、「先輩たちが始め、ここだけに残るものをやめるわけにはいかない。60年に及ぶ先輩たちの思いも載せて奉納したい」と意気込んだ。
走る飾り山笠は、祭りが終わると、商店街の広場に1年間飾られる。舁き棒に触ることができ、記念撮影を楽しめる。観光客に山笠の説明をすることもあるという原さんは「お客さんに博多の『本当の』山笠を伝えたい」と熱っぽく話した。