生物多様性の恩恵を途上国へ還元する「基金」設立へ
記事のポイント①COP16では「生物の遺伝情報(DSI)で得た利益の再配分」が議題の一つに②DSIは医薬品などの開発に有益だが、情報提供する発展途上国は利益を享受できていない③そこで基金を設立し、DSIを活用した企業が利益や売上の一部を拠出へ
2024年11月、コロンビアのカリで生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。ここでの議題の一つが「DSIによって先進国企業が得た利益を、どう発展途上国に再配分するのか?」という問題だった。(新語ウォッチャー=もり ひろし)
DSI(Digital Sequence Information)とはデジタル化した「生物の遺伝情報」のこと。医薬品・化粧品・新品種などの開発に有益な情報なのだが、情報の供出元となる発展途上国がその利益を十分に享受できていない。一方で発展途上国には生物多様性の危機に瀕する地域が多く、その保全には多額の資金が必要となる。 そこで同会議は、国連開発計画(UNDP)のもとで「カリ基金」を設立することを決めた。DSIを活用した企業が、利益の1%または売上の0.1%を目安に資金を拠出する仕組みを想定する。拠出された基金の半分は、情報の供出元である先住民や地域コミュニティに提供する予定だ。政府や慈善団体ではなくDSIで利益を得た企業による拠出を想定している点で、画期的な枠組みとなる。 ただし基金の詳細は未定。今後、拠出率や拠出企業の範囲などを詰める。