ラインの力で優勝した脇本雄太 ウィナーズカップ決勝に見た「競輪」の面白さと奥深さ
この一戦で垣間見た「競輪」の面白さ、奥深さ
2着に古性選手で、3着に清水選手。4着には、最後に外からよく差を詰めた、清水選手マークの河端選手が入りました。見せ場十分だった伊藤選手は、最後に失速して5着という結果。北井選手は7着で、連係を外して最後方に置かれた深谷選手は、見せ場なく8着に終わっています。ライン戦は、窓場選手の果敢な走りで主導権を奪った、近畿勢の完全勝利。そして、S級S班が上位を独占というレース結果でもあります。 脇本選手は、ライン先頭の窓場選手と、3番手でいい仕事をした古性選手に大きく助けられての優勝。「ラインのおかげ」と心の底から思える、脇本選手にとってあまり経験のないカタチの優勝だったのではないでしょうか。とはいえ、勝負を決めにいったときにみせた加速の鋭さは、さすが脇本選手といえるもの。近畿勢でワンツーを決められたことで、ホッとする気持ちもあったでしょうね。 古性選手は惜しくも2着という結果でしたが、ヨコの動きで南関東勢の連係を断ち、さらに清水選手にも大きく外を回らせるという珠玉の働き。常にベストを尽くすその姿勢には、本当に頭が下がりますよ。清水選手も、うまく流れに乗っていいタイミングで仕掛けられたと思いますが、古性選手にしてやられたといったカンジでしょうか。それでも、清水選手らしいアグレッシブな走りができていましたよ。 北井選手については、自分の得意とするカタチに持ち込めなかったのがやはり大きい。とはいえ、今回はこういった展開となることが十分に考えられたメンバー構成。それを想定に入れた上で、次善の策としてどのような手を打つのかという逃げ方の“幅”が、もう少し必要かもしれませんね。それに、松山記念でみせたような超抜級のデキにはなかったというのも、中途半端な走りとなった背景にあったのかもしれません。 あとは、競輪の基本である「内有利」を改めて感じましたね。流れを見据えながらの外併走だったとはいえ、あのカタチから近畿勢に立ち向かうのは、深谷選手が連係を外していなかったとしても難しい。相手が格下ならばともかく、絶好調の窓場選手と輪界のトップ選手2名の連係ですからね。戦力的に五分ならば内が勝つのが、競輪というもの。これも、前受けからの突っ張り先行が強い理由のひとつです。 窓場選手の走りについては、「惜しいな」と感じた方も多かったかもしれません。確かにあの素晴らしいデキならば、自身がもっと優勝に近づくような走りもできたことでしょう。それは、誰よりも本人がいちばんよくわかっているんですよ。であるにもかかわらず、巡り合わせによっては納得づくで、ラインから優勝者を出す走りに徹することもある。これが「競輪」という競技の面白さであり、奥深さでもあるのです。