ラインの力で優勝した脇本雄太 ウィナーズカップ決勝に見た「競輪」の面白さと奥深さ
窓場選手は一次予選と二次予選を連勝し、古性優作選手(100期=大阪・33歳)の前を任された準決勝でも、古性選手に差させず連勝を伸ばします。森田優弥選手(113期=埼玉・25歳)の斜行で3車の落車があったとはいえ、あの展開で差されていないのだから本当にデキがいいのでしょう。調子を上げてきていた印象の眞杉匠選手(113期=栃木・25歳)は、このレースで落車して残念ながら敗退となりました。 準決勝では、松浦悠士選手(98期=広島・33歳)も落車で敗退。左手の指を骨折とのことで、復帰までには相応の時間を要するようですね。そんな激しい戦いを勝ち抜いて決勝戦まで駒を進めてきたのは、「高い能力のある選手」と「調子のいい選手」ばかり。ここまでに名前をあげていないところでは、清水裕友選手(105期=山口・29歳)や伊藤颯馬選手(115期=沖縄・24歳)もかなりいいデキだったと思います。 3名が勝ち上がった近畿勢は、窓場選手が先頭を任されました。番手を回るのが脇本選手で、3番手を固めるのが古性選手という、なかなかお目にかかれない並びです。中国勢は、清水選手が前で、番手に河端朋之選手(95期=岡山・39歳)という組み合わせ。南関東勢は、北井佑季選手(119期=神奈川・34歳)が先頭で、深谷選手が番手を回ります。単騎勝負が、伊藤選手と坂井洋選手(115期=栃木・29歳)ですね。 出走する全員が自力で勝負できるという、いかにもウィナーズカップらしい決勝戦のメンバー構成。窓場選手は徹底先行型ではありませんが、脇本選手の前を走るとなれば、ここは「なにがなんでも主導権を奪う」のが青写真でしょう。それに対して、先行に強いこだわりを持つ南関東ライン先頭の北井選手が、どのようなレースを仕掛けてくるのか。まずは、初手でどう動いてくるかがポイントとなります。
初手の並びは「車番通り」に
それではそろそろ、決勝戦のレース回顧に入りましょう。レース開始を告げる号砲が鳴ると同時に、素晴らしい飛び出しをみせたのが7番車の古性選手。見事に外枠からスタートを取りきって、近畿ラインの前受けを確定させました。その直後4番手には清水選手がつけて、北井選手は6番手。そして後方に単騎の伊藤選手と坂井選手というのが、初手の並びです。結果的には「車番通り」ですね。 おそらく南関東勢も前受けからレースを組み立てたかったと思いますが、それは叶わず後ろ攻めに。窓場選手が前を簡単に斬らせてくれるわけがありませんから、北井選手は立ち回りが一気に難しくなります。突っ張られるとわかっていて赤板の手前から前を抑えにいくのは、リスクとリターンが釣り合わない。少ない選択肢のなかで何が最善手なのかを、北井選手は必死に考えていたことでしょう。 とくに動きがないまま周回が進み、レースは赤板(残り2周)を通過。後方の北井選手が前へと進出を開始したのは、赤板後の1センターからでした。一気にカマシて主導権を奪いにいくのではなく、前との差を少しずつ詰めていった北井選手。しかし、後方の動きを待ち構えていた先頭の窓場選手は、一気に前へと踏み込んでペースアップ。予定通りの突っ張り先行で、主導権を奪いにいきました。