カラオケ館の新業態カフェは「おじさん仕様」 112席で店員1~2人
店舗を省人化、朝5時まで営業
カラオケ事業でテレワークルームを展開してきた知見に加え、多機能セルフレジを導入して実現したのが、朝5時までの深夜営業だ。荒井氏によれば、隣接するカラオケ館銀座総本店は、平日深夜でも2割程度が埋まっており、タイム珈琲店にも同等の集客を期待するという。 たしかに筆者も、かつては深夜にファミレスでドリンクバーを頼んで仕事をしていた時期があったが、新型コロナ禍以降は大半の店舗が深夜営業を廃止してしまった。タイム珈琲館の深夜営業は、飲み会で終電を逃した人や、深夜帯に仕事をしたい人など、深夜に時間を持て余した人をカバーしているのもポイントだ。 「多機能セルフレジを導入したことで、50%ほどの人件費削減を実現した。平日昼間は、社員ふくめて2人、深夜帯は1人で店舗を回し、有事の際は隣接するカラオケ館のスタッフを派遣する」(荒井氏) 深夜帯にスタッフが少なければ、酔い客が騒いだり、若者のたまり場になったりするなど、治安の問題も出てくる。そうした懸念も、長年カラオケ事業を展開してきたノウハウや、カラオケ館のスタッフがヘルプに入る対応力でカバーする。 また入り口にAI(人工知能)の顔認証システムを設けることで、18歳未満と23歳未満と思われる来店客を感知。従業員のところに通知が届き、年齢確認を行う対策も取っている。 B&Vの調査によれば、23年度のカラオケの業務用市場は、新型コロナ禍以前の19年度に比べて約7割弱まで落ち込んだ。さらに近年は、客層の低年齢化が進んで、中年層がどんどんとカラオケから離れているため、新型コロナ禍以前の水準まで回復させるのが難しい状況になっている。 「人口減少やリモートワークの普及により、カラオケ業界は新型コロナ禍以前に完全に戻らない。これからは絶対にアップデートが必要になってくるし、いかに体力のある企業が生き残っていけるかが勝負になってくる。 そこで自社ビルから新事業の喫茶店にチャレンジしていく。中年のサラリーマン層が利用して、カラオケ館が展開している喫茶店だと知れば、再度カラオケに来店する動機にもつながるかもしれない」(荒井氏) 現時点では新宿区・歌舞伎町への出店がすでに決まっている。それ以降は銀座1号店の様子を見つつ、約50棟ある自社ビルの一部を業態転換していく方針だ。
佐藤 隼秀