カラオケ館の新業態カフェは「おじさん仕様」 112席で店員1~2人
「カラオケ館」を運営するB&V(東京・練馬)が、2024年5月からカフェ業態に乗り出した。カラオケチェーン大手らしく、料金は時間制で、単品ではなくフリードリンク、時間内なら出入り自由と融通を利かせた。さらに2フロアのうち1フロアは全面喫煙可能、朝5時まで営業、受付や精算はセルフレジで対応と、そのサービス内容は昨今の喫茶店チェーンと一線を画す。銀座の地で「カフェ難民」となった“サラリーマン”に手を差し伸べる同店を体験してきた。 【関連画像】ドリンクバー。スペシャルブレンド豆、エメラルドマウンテン豆、キリマンジャロブレンド豆を使用したコーヒー3種に、4種類の健康茶を含む全52種類のドリンクが飲み放題 ●1時間990円からの時間制 カラオケ館を展開するB&Vが2024年5月8日、銀座4丁目に「タイム珈琲店 銀座店」をオープンした。同社が保有する自社ビルの地上1階と地下1階を改装し、2フロアで計112席を設置。新型コロナウイルス禍以前から7割弱に落ち込んだ業務用市場を、新業態でカバーしたい方針だ。 喫茶店といっても、店内の様子は大手カフェチェーンとまったく異なる。 入り口には、多機能セルフレジを設置。入店時に、レジのタッチパネルで滞在時間やセットメニューの軽食を選択し、2次元コード(QRコード)が印字されたレシートを受け取る。 席を確保したあとは、各フロアに設置されたドリンクバーの機械から、セルフで飲み物を取ってくる。時間延長や追加注文は各席に設置された端末で行い、退店時はセルフレジでレシートを読み込み、精算を済ませる。 空港ラウンジをコンセプトとした店内は、席と席の間隔も広く、リクライニングシートも設けた。料金体系は、最低60分990円(税込み、以下同)からの時間制。30分ごとに495円で延長可能で、2200円のフリータイムプランも用意している。 営業時間は朝7時から翌朝5時までとした。時間内は出入り自由。店内にはロッカーが常備されているので、荷物を預けて外出もできる。 ●独特のコンセプト、その狙いは? サービスや店舗の雰囲気を一通り体感してみると、タイム珈琲店にはカフェらしさを感じない。タッチパネルで注文や会計を完結させる仕組みはファミレスに近く、時間制はどこか漫画喫茶を思わせる。 内観はかなりシンプルで、ドリンクバーのグラスもカラオケ店でよく見るプラスチック製の簡素な容器だ。総合すると、喫茶店というよりも、確かにコンセプトの空港ラウンジに近い雰囲気だ。 ただ、この「喫茶店らしからぬポイント」が、かえって居心地の良さも感じさせる。接客スタッフは少ないが、レジに出向いたり、店員を呼んで注文したりする必要がなく、飲み放題なのでドリンクを飲むペース配分も気にしなくて済む。途中で席を空ける融通も利くので、時間内はストレスフリーに過ごせる。 こうした使い勝手の良さでB&Vが狙うのは、平日の“サラリーマン”の取り込みだ。 銀座駅周辺という立地もあり、近隣にカフェがひしめく中、B&Vでは競合との差別化を強く意識している。 一例を挙げると、昨今の大手カフェチェーンは通路が狭く、混雑時は隣客とのスペースが狭く感じる。他にも、仕事などでの長時間利用を禁止していたり、専用の喫煙スペースまで移動しないと紙たばこが吸えなかったりと、カフェが乱立していても、必ずしもサラリーマンがくつろげない状況も生まれている。 そこでタイム珈琲店は、店内はシンプルな構成にする半面、席と席の間は広めに取り、時間制を採用。地下1階は全70席(うち電子たばこ54席、紙たばこ16席)を喫煙席とするなどの選択に踏み切った。 B&V カラオケ館 直営チェーン本部 営業推進本部長の荒井兼一氏は、「銀座という土地柄、休日はインバウンドやファミリー層であふれるので、勝手に客足は伸びると思う。平日にいかに集客できるかが勝負になってくる。そこでサラリーマンの需要に寄せたコンセプトにした」と語る。 今回のカフェ事業には、B&Vが新型コロナ禍にカラオケ事業で展開してきたテレワークルームの知見も生かされている。午前7時から午後1時半までは、ホットケーキやピザトーストなど計6種の中から選べる軽食が無料でついてくるため、出勤前や昼休みにサクッと1時間利用するのにもちょうど良いはずだ。