児童虐待、単身高齢者、母子家庭……役割増す制度100年迎えた民生委員のいま
今年5月12日、民生委員制度は発足から100年を迎えました。100年前と現在では、地域を取り巻く環境は大きく変わっています。また、地域で生活する人たちの人間関係も多様化しています。 そうした中、民生委員は、「身近な相談相手」「地域と行政のつなぎ役」とも言われるほどの重要な役割を担ってきました。民生委員とは、どんな人たちが務め、どういった業務をこなしているのでしょうか?
年平均131日、活動日数は増加傾向 しかし活動費年6万円の支給があるのみ
現在、日本全国には約22万9000人の民生委員がいます。そんな民生委員は、厚生労働省から委嘱されて活動をしています。厚労省から委託されていることからも窺がえるように、民生委員は非常勤かつ特別職の地方公務員という身分です。 東京や大阪といった都会暮らしをしている多くの若者は、民生委員と無縁な生活をしています。その一方で、「最近は単身高齢者の増加をはじめ、児童虐待や母子家庭問題など社会の多様化によって民生委員の活動は以前よりも幅広くなっています」と、話すのは厚労省社会・援護局地域福祉課の担当者です。 民生委員の業務は住民の困り事の相談に乗ったり、生活で必要になる証明書等の取得を手伝うために役所に同行したりと多岐にわたります。社会の多様化によって民生委員の活動日数は増加傾向にあり、2015(平成27)年度の平均活動日数は年131.4日と多忙を極めます。 そうした事情に加え、民生委員は非常勤の公務員という身分ながら、報酬がないことも民生委員の負担感を重くしている要因とされています。民生委員の活動費は自治体によって高低はあるものの年額で5万9000円ほどしか支給されていません。
多くは自治会・町内会から推薦 高い再任率
無償ボランティアは、どうしても成り手を探すことが困難になりがちです。民生委員の成り手は、地元の篤志家や自営業者が多くを占め、年とともに民生委員数は微増しています。他方で地方自治体が必要とする民生委員の定数は増加しており、充足率は減少傾向にあります。それでも充足率は96.3%と高い数字を維持していることもあり、深刻な成り手不足までには至っていません。 「民生委員の多くは自治会・町内会などから推薦されて選任されています。任期は1期3年ですが、2016年度の改選では再任委員が68.9%を占めました。多く民生委員はやりがいを強く感じており、長く務めていただける傾向にあります」(同)。